生殖器に発生した病変の治療のための性器切断
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/19 05:03 UTC 版)
「性器切断」の記事における「生殖器に発生した病変の治療のための性器切断」の解説
性同一性障害に対する性別適合手術以外にも、症病によっては治療の一環として性器の切除手術を余儀なくされる場合がある。こうした医学的理由による切除の原因は外傷もあれば様々な症病の種類も多様であるが、陰茎切断や睾丸摘出はガン、陰嚢切断はフルニエ壊疽に対する場合が典型例である。切断を伴う手術にあっては形成外科手術を経て性転換に到ることもあるが、本件に限って言えば性器の切断そのものが目的ではなく、治療の手段として行われるやむを得ぬものであるため、できうる限り残すか、もしくは人工的に性器を形成する手術(陰茎再建術/陰嚢再建術)を伴うこともある。ちなみに医学用語の「陰茎切断術」はPenectomy(ドイツ語:Penektomie)の訳語である。 陰茎部分切断術 "Partial penectomy"の訳語で「陰茎半切断術」とも訳される。あくまで大雑把な指標であり個人差も大きいが残存陰茎長が勃起時で6cmあれば性交に支障なく、平常時で3cmあれば立位排尿が可能。日本の医療史においては腫瘍による切断の最年少は14歳の少年が泌尿生殖器の腫瘍で手術を受けた記録がある。これは厳密にはガンではなく良性腫瘍であったが、症状が進行しており陰茎切断、後に再建手術を受けている。 陰茎全切断術 "Total penectomy"の訳語。根部海綿体まで摘出する場合は特に"Radical penectomy"ともいい「陰茎全摘」とも訳される。これは海綿体から尿道を長めに剥離温存し、根部海綿体を恥骨結合から剥離、肛門直前で左右に分かれる陰茎脚の部分で切断する。日本では16歳で海綿体繊維腫のためこの手術を受けたのが(腫瘍による切断の)最年少である。 全除精術 "Total emascultion"の訳語。「全去勢術」「全陰部切断術」「外陰全摘」とも訳される。陰茎・睾丸・陰嚢の男性外性器一式すべてを切除する。日本では腫瘍によるこの手術の適用例の最年少は22歳の陰茎がん患者で、退院直前に陰茎のみの再建手術を受けている(陰嚢、睾丸は再建せず。またこの再建陰茎は尿道を通しておらず、外見を繕うものであり立位排尿を可能にするものではなかった)。 Jackson分類法によるガンの病期分類では1期~2期が部分切断、2期~3期が全切断の適用となる。4期に到るとガンの増殖、転移が陰茎に留まらず、あるいはリンパ節に及ぶため、手術が困難もしくは不可能となる。 なお、2006年には中国の広州で、事故によって性器を損傷した44歳の男性が脳死したドナーより移殖を受けたが、術後経過に難があり、患者の要望によって再切断を行った事例がある。極めて珍しいケースと言えるが、性器の生体移植自体、自家移植(接合整復)を除くとこれが世界で初めてのことであった。
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