理論的基礎の確立
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/20 21:40 UTC 版)
蛇行動の数理的解析については、1883年、クリンゲル(W. Klingel)は幾何学的な輪軸の運動解析を行い、1輪軸の幾何学的蛇行動波長を導出した。その後、1916年、 車輪・レール間に作用する力を考慮した初めての現実的な運動モデルとそれによる機関車の蛇行動解析に関する論文が、イギリスのカーター(F. W. Carter)によって発表された。この論文の中でカーターは車輪・レール間に作用する力としてクリープによる接線力を導入し、車輪の踏面勾配とクリープによる接線力が結びつくことで動的な不安定性が生み出されることを示した。カーターは引き続き1920年から1930年にかけて運動解析の論文を発表し、機関車の車軸配置が蛇行動特性に与える影響などを発表する。例えば、ホワイト式車輪配置が4-6-0の機関車では、構造の非対称性により前進と後進で蛇行動限界速度が異なることなどを指摘している。 19世紀にかけて、エドワード・ラウスによる安定性判別法(今日では制御理論分野におけるラウス・フルビッツの安定判別法として知られる)などのシステムの安定性解析理論が発達してきた。これらの理論の発達は飛行機のフラッター現象の解明などに応用されていく。カーターも、上記の研究の中でラウスの安定判別法を車両の運動解析に応用して蛇行動安定性解析を達成している。このようなカーターの働きにより鉄道車両の運動解析における理論的な基礎が確立された。その一方で、当時の職業鉄道技術者らは経験的な機械工学による設計手法を行ってきており、カーターが取り入れたような理論的手法に通じていなかった。理論結果を裏付ける実験的な基礎の不足もあり、カーターの成果は鉄道工学の中に広がりを見せず、その後20年間ほどの間は運動解析の面で特筆すべき進歩は僅かとなった。
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