物性と応用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/30 10:18 UTC 版)
「2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル」の記事における「物性と応用」の解説
DPPH は対称性と融点の異るいくつかの結晶をもつ。市販されている粉末は 130 °C 付近で融ける複数の相の混合物である。DPPH-I(融点 106 °C)は直方晶系、DPPH-II(融点 137 °C)はアモルファス、DPPH-III(融点 128–129 °C)は三斜晶系である。 DPPH は良く知られたラジカルであり、他のラジカルの捕捉剤(スカベンジャー)でもある。したがって、DPPH を加えて反応速度が低下する反応にはラジカルが関与していると言える。520 nm 付近に強い吸収帯を持つため、DPPHラジカル溶液は深紫色を呈し、中性化により無色または白っぽい黄色に変化する。この性質から反応を可視化することができ、また520 nm における吸光もしくは EPR 信号からラジカルの初期濃度とその変化を測定することもできる。 DPPH は効率的なラジカル捕捉剤であるため、強力なラジカル重合阻害剤でもある。 安定かつ特性のよく知られたラジカル源として、DPPH は EPR 信号の位置 (gマーカー) および強度の標準物質として伝統的かつおそらく最も普及したものである。新鮮な試料を用いればラジカル数を計数することができ、分裂因子を g = 2.0036 で校正することができる。DPPH の信号は通常一つのスペクトル線に集中し、強度もマイクロ波強度の自乗根に対して広い範囲で線形にスケールするため使い勝手が良い。DPPH ラジカルの希薄な性質(41原子あたり1不対スピン)の結果として、linedeprecated[訳語疑問点]は比較的小さい (1.5–4.7 G)。 linedeprecated[訳語疑問点]はしかし、溶媒分子が結晶中に残っており、高周波 EPR (~200 GHz) で測定すると大きくなり、若干の g 異方性が検出できる。 DPPH は通常は常磁性固体であるが、0.3 K 付近の極低温まで冷却すると反強磁性状態に遷移する。この現象は1963年にアレクサンドル・プロホロフにより初めて報告された。
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