物性・特性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/19 02:51 UTC 版)
「高靭性セメント系複合材料」の記事における「物性・特性」の解説
ECCは、通常のセメントやコンクリートだけでなく、通常の繊維補強コンクリートと比べても、張力を受けた際に、特異な性質を有する。ECCには、その体積の2パーセント以内の繊維材料が混入されている。この繊維材料とセメント材料とが相互作用をするので、ECCは用途に合わせて、その物性を設計する事も、ある程度は可能である。繊維材料を含んだECCは、一般的なコンクリートが破壊される段階で見られるような幾つかの大きな亀裂ではなく、むしろ、非常に微細な亀裂を多数作る性質を有する。普通のコンクリートならば破壊されてしまうような状況において、この性質は、ECCを変形させる。 さらに、微細な亀裂は、その内部に雨水が浸透する事を難しくするため、ECCで塗り込めた鉄材を腐食させ難くするために有利であり、そして、この微細な亀裂が自動的に修復される意味でも有利である。この微細な亀裂の自動的な修復は、何らかの理由で水に曝露された場合に、微細な亀裂の中で、例えば、方解石やケイ酸カルシウム水和物のような、セメント材料の水和物が自動的に生成し、それが微細な亀裂を埋めてしまうという機序によって達成される。こうして微細な亀裂の中で生成したセメント材料の水和物は、白い傷跡のように微細な亀裂の中に現れる。この自動修復によって、微細な亀裂を塞いで、水が浸透する事を妨げるだけでなく、ECCの強度も回復する。 もっとも、この水に曝露された場合に、セメント材料の水和物が生成される現象は、ECCに限らず、一般的なコンクリートやセメントで普遍的に見られ、さらに、ECCのように微細な亀裂が自動的に修復される部分も有るのだが、それは亀裂の幅が充分に狭くなければ、亀裂の回復は充分に起こらない。そして、残念ながら一般的なコンクリートが破壊される段階で出現する亀裂は、大きく成長し勝ちである。一方で、ECCに発生する微細な亀裂の幅は、内部の繊維材料の御蔭で、全ての亀裂が自動的に修復される幅に、しっかりと制御される傾向にある。いずれにしても、どのようなセメントであろうと、適切な繊維材料を混合すれば、その強度を高められるし、上手くすれば自動修復能を持たせられる場合もある。ただし、そもそもECC自体が、2010年代に入っても、未だ発展途上の材料である。
※この「物性・特性」の解説は、「高靭性セメント系複合材料」の解説の一部です。
「物性・特性」を含む「高靭性セメント系複合材料」の記事については、「高靭性セメント系複合材料」の概要を参照ください。
- 物性・特性のページへのリンク