無機態炭素、窒素、硫黄の取り込み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 06:05 UTC 版)
「代謝」の記事における「無機態炭素、窒素、硫黄の取り込み」の解説
無機態の炭素は主に二酸化炭素として固定される。炭酸固定経路は光合成のカルビン - ベンソン回路や還元的クエン酸回路、メタン生成経路などによる。カルビン回路は光化学反応によって生じたATPおよびNADPH、還元的クエン酸回路はピルビン酸:フェレドキシン酸化還元酵素による、通常のクエン酸回路の逆行、メタン生成経路はATP合成と炭酸固定が同時に行われる。炭酸固定によって生じた生産物は通常は糖としてあるいは異化の中間代謝物として、高次の生合成に組み込まれる。詳しくは当該記事へ。 水圏以外にも豊富に存在する窒素源としては大気中の窒素ガスが挙げられる。窒素ガスは窒素固定という代謝系のみでアンモニアまで還元される。窒素固定は根粒菌などでは呼吸による、シアノバクテリアでは光化学系Iの循環的光リン酸化によるATP生成にて窒素固定が行われる。窒素固定反応は以下の通りである。 N2 + 6Fdred + 12ATP + 6H+ → 2NH3 + 12ADP + 12Pi 2H+ + 2Fdred + 4ATP → H2 + 4ADP + 4Pi 硝酸塩は有機物窒素と比べて酸化的であり、同化的硝酸還元と言う過程にてアンモニアまで還元される。 NO3- + NAD(P)H + H+ → NO2- + NAD(P)+ + H2O NO2- + 6Fdred → NH3 + 2H2O 最終産物のアンモニアは下記の系によりアミノ酸に取り込まれる。また、アンモニアに含まれる窒素の酸化レベルは有機物窒素と同一であり、還元型ピリジンヌクレオチドなどは必要としない。アンモニア同化反応は以下の3つがある。 ケトグルタル酸(クエン酸回路中間体) + NH3 → グルタミン酸 グルタミン酸 + NH3 → グルタミン アスパラギン酸 + NH3 → アスパラギン 硫黄は同化的硫酸還元によってタンパク質にチオールあるいはスルホ基として取り込まれる。硫酸塩はタンパク質中の硫黄と比べて還元的であり、アデノシンと結合することにより活性型の硫黄(ホスホアデノシンホスホ硫酸;PAPS)の状態でタンパク質と硫黄が結合する。 SO4- + ATP → APS + PPi APS + ATP → PAPS + ADP PAPS + Protein-SH基 → Protein-S-SO3-(このProteinの末端は含硫黄アミノ酸であるシステイン) Protein-S-SO3- + 6Fdred → S2-(有機物として利用され得る硫黄) + S-S結合を有するタンパク質 Protein S-S bond + NADPH → Protein-SH + NADP+ S2-はその後、システイン、ホモシステインを経てメチオニンに取り込まれる。ただし、硫黄代謝は更に多様であると考えられており、異化型硫酸還元や硫黄酸化などでは、更に複雑な中間体が生じている可能性が示唆されている。
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