溶接欠陥が原因となった事故
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/18 06:05 UTC 版)
建築物・橋梁・船舶・貯蔵塔などが突然大きな破壊を起こすというケースでは、しばしば溶接不良が原因となっている。構造上重要な部分の溶接不良から、構造物全体が倒壊するということもある。また、低温時に特に起こりやすくなる脆性破壊では、一箇所で起こった破損が、連続する溶接部分全体に瞬時に走るため、船体・巨大タンクなどが突如折れるように崩壊するという事故が発生している。以下に、広く知られた事例を挙げる。 第四艦隊事件 1936年、大日本帝国海軍の艦隊が台風に遭遇し、複数の艦艇が破壊された海難事故である。電気溶接の接合部の不良が原因のひとつとして指摘された。(→第四艦隊事件に詳述。) リバティ船沈没事故 第二次世界大戦中にアメリカで量産された貨物船・リバティ船が脆性破壊を起こすという事故が1,031件(建造されたリバティ船の総数は2,708)報告されている。溶接不良と、冬季の海の冷たさから起こった脆性破壊が原因であった。この事故を契機に、靭性に優れた金属の開発などが進み、溶接技術の安全性は向上した。この事例は、失敗の検証を通じて技術を改良した事例として、技術史・失敗学においてしばしば言及される。 ソウル聖水大橋崩落事故 1994年、大韓民国・ソウル市内の漢江にかかる道路橋・聖水大橋が突然崩落し、通行中の車両が落下、死者32名の惨事となった。吊り桁の鉄骨トラスに溶接不良があったが、検査が不十分であり見逃されていた。過剰な予算削減や品質管理の杜撰さなどが指摘され、ソウル市の道路施設関係者の一部は業務上過失致死等で逮捕されている。この事故がきっかけで韓国ではインフラ施工技術への不安が高まり、金泳三大統領は全国の土木構造物の一斉点検を命じた。 貨物船フレア号沈没事故 1998年、大西洋航海中の貨物船フレア号が嵐に遭遇し、船体が真っ二つに割れて沈没し、死者21名の海難事故となった。船体の溶接不良があり、さらに低温という環境の悪さもあいまって脆性破壊を起こしたことが判明した。 京福電気鉄道越前本線列車衝突事故 ブレーキロッドを繰り返し溶接補修して用いてきたが、溶接部分から破断。単行列車であり、またブレーキ構造から1両の4軸全ての制動力を失い、回避手段のないまま対向列車に正面衝突した。
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