準拠法指定の方法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/28 00:22 UTC 版)
上記のとおり、準拠法指定に関する立法上・解釈上の指針は、問題となる私法的法律関係に関する最密接地の法を選ぶ点にあり、そのためには、そのような地を指定することが可能となる要素を媒介とする必要がある。このような、準拠法の指定に際して当該法律関係を特定の地の法に結びつけるための媒介として利用される要素のことを連結点(又は連結素)という。例えば、冒頭の例では「不法行為に基づく債権の成立および効力」という単位法律関係に関する連結点は「加害行為の結果が発生した地」である。 最密接地の法を選択するという連結点の機能上、一つの法律関係については一つの連結点により準拠法が指定されるのが原則である。しかし、連結点として考えられる要素が複数考えられる場合、連結点として取り出した要素が問題となる具体的な法律関係には存在しない場合(例えば、婚姻関係につき夫婦共通の国籍を連結点にすべきとの立法の下で、問題となる夫婦が国籍を異にする場合)、準拠法として指定された法律が法廷地の公序に反する場合などもあるため、立法において具体的に連結点を決めるためには、これらの点についても考慮する必要が生じる。 このような観点から、一つの単位法律関係には、一つの連結点により、一つの準拠法が指定されるのを原則としつつも、以下のような特別な連結方法を採用する場合もある。 段階的連結 一つの法律関係につき複数の連結点を用意した上で、優先順序を付けるもの。例えば、日本では婚姻の効力につき、夫婦共通の国籍→夫婦共通の常居所地→夫婦に最も密接な関係のある地の順序により連結点を特定し、準拠法を指定する(通則法第25条)。 累積的連結 一つの法律関係につき複数の連結点を用意した上で、それぞれの連結点が指定する準拠法が共通して認めるルールを適用するもの。例えば、日本では不法行為による損害賠償につき、加害行為の結果が発生した地が連結点になるが(通則法第17条前段)、法廷地(日本)をも連結点にし、法廷地法(日本法)によっても不法でなければ、損害賠償請求は認められない(通則法第22条1項)。 選択的連結(択一的連結) 一つの法律関係につき複数の連結点を用意した上で、それぞれの連結点が指定する準拠法のいずれかにより要件が満たされればよいとするもの。例えば、日本では遺言の「方式」に関する要件につき、遺言の行為地、遺言成立又は死亡時の国籍、遺言成立又は死亡時の住所地、遺言成立又は死亡時の常居所地、不動産に関する遺言の場合は不動産の所在地のいずれも連結点になり、どれか一つの連結点により指定された準拠法により方式が有効であれば、他の連結点により指定された準拠法では方式が無効であったとしても、方式につき有効なものとされる(遺言の方式の準拠法に関する法律第2条)。 配分的連結 一つの法律関係につき、各当事者の要件につき別に定められた連結点によりそれぞれの準拠法を指定し、それを配分的に適用するもの。例えば、日本では婚姻の成立要件につき、夫となるべき者についての要件は夫となるべき者の国籍、妻となるべき者についての要件は妻となるべき者の国籍が、それぞれ連結点となる(通則法第24条1項)。
※この「準拠法指定の方法」の解説は、「準拠法」の解説の一部です。
「準拠法指定の方法」を含む「準拠法」の記事については、「準拠法」の概要を参照ください。
- 準拠法指定の方法のページへのリンク