法律の錯誤とは? わかりやすく解説

法律の錯誤(違法性の錯誤)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/29 15:25 UTC 版)

錯誤 (刑法)」の記事における「法律の錯誤(違法性錯誤)」の解説

違法性錯誤とは、発生した違法な事実については認識があり認識通り結果発生しているが、自分行為は「違法ではない」と思い込んでいた場合である。これには法の不知当てはめの錯誤という二つ類型がある。以下、具体例挙げて説明する。 法の不知 大麻所持することが一定の条件の下において合法とされている国に育ったAが、出身国合法的に大麻入手し、それを持ったまま日本入国した。Aは日本において大麻所持することが処罰対象になるということ知らなかった。 Aは大麻所持禁止する法律存在それ自体知らなかった。これが法の不知による違法性錯誤である。 当てはめの錯誤 Aは自転車盗まれ悲嘆にくれていたところ、数日後自分自転車がBの家のガレージにおいてあるのを発見した。Aはその自転車ガレージから出して自分の家持ち帰った。 Aの行為通常ならば窃盗罪にあたるが、Aとしては自分自転車持ち帰って何が悪い、違法な行為であるはずがない考えていた。しかし現在の通説判決例によれば、この場合には窃盗罪成立してしまう可能性が高い(司法の判断に待つべきであるところを自分判断にて行う「自救行為」として処罰対象となる)。 つまりAは違法なことをしているのにその自分行為について「違法ではない」という誤った評価下してしまっている。これが当てはめの錯誤である。 法律の錯誤(違法性錯誤)の場合、すなわち違法性の意識欠け場合故意責任故意)ないし責任阻却されるか、383項関連して争いがある。 この問題前提として、まず、これを故意責任故意)の問題とするか、故意以外の責任要素問題とするかの争いがあり、故意説は故意責任故意)の問題とする。これに対して責任説故意犯過失犯共通する問題として故意責任故意以外の責任要素問題とする。 制限故意説 制限故意説は、故意責任故意)の問題としつつ、違法性の意識責任故意要件ではなく、ただ違法性の意識可能性責任故意要件とする。責任主義見地からは違法性の意識要件とすべきだが、他方確信犯処罰必要性からは違法性の意識要件とすべきではなく違法性の意識可能性があれば人格形成における反規範的人格態度認めうる点で違法性の意識がある場合同質といえるからである。 制限故意説によれば383項解釈は、本文の「法律知らなかった…」とは「違法性の意識を欠くこと」ではなく、「法律の規定知らないこと」を意味し法律の規定知らないだけでは責任故意阻却されないことを意味するとされ、ただし書の「情状により…」は、違法性の意識欠いたが、その可能性があったとき、責任故意阻却されないが、刑を減軽し得る定めたものとされる結局制限故意説によれば違法性の意識欠き違法性の意識可能性もなかったときは、責任故意阻却されるが、違法性の意識欠きつつも違法性の意識可能性があったときは、責任故意阻却されない。ただし、違法性の意識可能性があっても、それが困難であったときは責任減少し、刑を減軽し得る383項ただし書)。 責任説 他方責任説は、故意以外の責任要素問題としつつ、その責任要素として違法性の意識要件でなく、ただ違法性の意識可能性要件とする。

※この「法律の錯誤(違法性の錯誤)」の解説は、「錯誤 (刑法)」の解説の一部です。
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