水洗装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 08:53 UTC 版)
列車便所は、手洗い用のシンクを共に設置する兼ね合いもあって、比較的早期に水洗装置が採用された。 当初は、客車に動力がないので便所上の屋根裏に水タンクを収め、重力降下で水を供給するという構造が基本であった。最初期はここに水を入れるべく駅で作業員が屋根に上って行っていたが、この方式は電化区間で危険なため間もなく給水管の位置が変更され、水道の水圧で十分屋根上まで水を運べることから下から給水できるようになった。 配管は天井板から便器まで壁を伝って接続され、途中に手動式の洗浄弁が設置された。しかし手動弁は尿などの飛散で不潔になりやすい欠点があり、また木造車体であった当時の客車では、屋根裏に設置できる水タンクの容量にもスペースや強度負担の面から限界があった。1929年から1931年にかけて客車の空気ブレーキの取り付けが行われた際に、副次的効果として圧縮空気タンクの標準装備化で空気圧を車内設備に使用できるようになり、これまで屋根上に設けられていた水タンクから重力で水を落とす機構を床下のタンクから水を押し上げられるようになったことで、水容量が屋根水タンク時代の約357リットルから床下タンク化で約500リットルに増加した。この際、足元に足踏みペダルを設置して水洗用ポンプを作動させる方式が採用された。以降近年までの長きにわたり列車便所の水洗装置は、手洗器ともども足踏み弁作動式の車両が多かった。 しかしその後はバリアフリーの観点から、足踏み式では足の不自由な旅客が扱うことが困難であることが指摘され、1990年代以降は航空機と同様にボタン操作の電動式や、さらに進んで赤外線感知機に手をかざすことで作動する「電子弁」が、手洗器ともども普及を見せている。
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