母船と子船
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/22 05:11 UTC 版)
漂着した工作子船の実物は日本に存在しており、福井県警察のホームページでも写真が公開されている。 工作母船は、他の事件での発見例によれば、工作子船を収納する特殊な造りになっており、船尾には子船が出入りするための観音開きの扉がある。1999年(平成11年)の能登半島沖不審船事件では、2隻の工作母船「第一大西丸」「第二大和丸」から観音開き扉の合わせ目が確認されており、2001年(平成13年)に奄美群島沖で発生した九州南西海域工作船事件の船も、潜水調査で船尾に扉のあったことが視認された。これら3隻の母船は100トン級で全長約30メートルであり、いずれも朝鮮労働党作戦部に所属する。工作母船は決して日本の中古漁船を改造したものではなく、徹底的に特別仕様のほどこされた特注品である。 工作子船は、能登半島沖の事件では時速70キロメートル近い速度を出しており、1基1,100馬力のエンジン(北朝鮮製)を4基備えていた。本事件で美浜町の海岸に打ち上げられた子船は全長8.95メートル、総トン数2.4トンであった。 工作子船が用いられるのは、もっぱら日本浸透の際に限られる。韓国の海岸に接近するときには、ほぼ同じ大きさの半潜水艇が用いられてきた。韓国においては、北朝鮮の工作船が見つかればすぐに戦闘が開始されるので、子船やゴムボートでの海岸への接近がたいへん危険なためである。 横田めぐみなど拉致被害者の目撃証言で知られる北朝鮮の元工作員、安明進の証言によれば、工作子船はエンジン音を隠すために排気ガスを水中に吐き出すように造られており、外側には軽い音を立てながら煙を吐き出す仮煙突まで設けられていて、外見上は釣り船かごく小規模の漁船にしか見えないよう偽装されている。また、ほとんどの工作船には日本製100マイルレーダーと40マイルレーダーが備えられていて、ロラン受信機やソナー(水中探知機)なども装備しているので、正確な日本侵入経路を設定することや日本の警備艇の追撃をかわすことは決して難しいことではない。多くの場合、工作船には個人用の小型武器から小型ミサイルに至るまで各種の武器が搭載されているので、万一の場合には応戦し、日本の偵察機や巡視艇を破壊することも可能であるという。
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