構造・空力設計
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/06 05:48 UTC 版)
A320の機体構成は典型的な旅客機と同じく、低翼の主翼下にターボファンエンジンを1発ずつ配置し、尾翼も通常配置となった。A320の機体構造は、A300およびA310の開発を通じて得られたデータやノウハウを活用して設計された。そして、中短距離の運航に適した構造強度とし、腐食防止、構造品質の長期保証、整備性の向上、部品点数の削減が図られた。部材には改良型のアルミニウム合金やチタン合金が採用されたほか、複合材料の使用範囲も拡大された。 主翼の設計はイギリスのBAe社が担当した。A320の設計上の巡航速度は、A300やA310より若干低くマッハ0.79から0.8に設定された。航続距離は3,000海里(約5,556キロメートル)と設定され、このサイズの旅客機としては短くない値だった。 主翼の厚みは空力的には薄い方がよく、一方で翼内燃料タンク容量と構造強度を十分確保するためには厚い方が良い。エアバスがA300で実用化したリア・ローディング翼型は様々な利点があったものの、翼の後方が薄いことから、A320の機体サイズではフラップを取り付ける空間をいかに確保するかが課題となった。これらの要求を満たすよう、コンピュータによる三次元解析を活用して主翼が設計された。出来上がったA320の主翼は、翼厚比こそA310と近い値だったものの、翼型は大きく異なり後縁側の厚みが確保された。主翼の平面形は浅い後退角と大きなアスペクト比を持つこととなった。フラップはシンプルな1段のファウラー・フラップとし、動翼には複合材料を多用することで軽量化が図られた。 胴体断面は2つの円構造を結合した「ダブル・バブル構造」とし、単通路機として最も太い胴体幅とされた。これにより機体重量が増えるものの、競合機より余裕のある客室と貨物室が実現した。さらに貨物室の扉を大型の外開きとして航空貨物コンテナを搭載可能にしたことで、貨物輸送の面でも競合機と差別化が図られた。 A320の原型型は最大離陸重量が66トンで、乗客164人が搭乗した場合の航続距離は1,750海里(約3240キロメートル)という仕様であった。これに対して、航空会社はもう少し航続距離を延ばすよう求めた。そこで、最大離陸重量を72トンに引きあげて主翼中央翼内に燃料タンクを追加するとともに主翼端にウイング・チップ・フェンスを装備して、航続距離を3,200海里(約5,930キロメートル)に延長するタイプが計画された。原型型はA320-100、重量増加型がA320-200と名付けられた。
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