構図・画法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/10 07:40 UTC 版)
絵巻物は、天地の幅が狭いという画面形式の制約もあり、室内の情景を描いたものには、内部の様子が分かるように、建物の屋根と天井を描かない表現法が生まれた。『源氏物語絵巻』などに見られ、「吹抜屋台」と呼ばれる。なお、「吹抜屋台」は絵巻物に限らず、画帖などにも見られる描法である。 他に「異時同図法」が、特徴的画法としてあげられる。これは、同一画面内に同一人物が複数回登場して、その間の時間的推移が示されているもので、『伴大納言絵巻』の「子どもの喧嘩」の場面と、『信貴山縁起絵巻』の東大寺大仏殿の場面がその代表例として知られる。後者を例にとると、登場人物の尼公(あまぎみ)が1つの画面に計6回描かれている。これは尼公が大仏殿に到着し、礼拝し、夜通し参篭し、明け方出発するという一連の時間的経過を1枚の絵で表現したものである。 絵巻物が襖絵、掛軸、屏風などの形式と根本的に異なるもう1つの点は、作品全体を一度に視野に入れることができないという点である。絵巻物は、博物館・美術館等においては、ガラスケースの中に、数メートルにわたって広げた状態で展示されるが、本来の鑑賞方法は、作品を机などの上に置き、左手で新しい場面を繰り広げながら、右手ですでに見終わった画面を巻き込んでいくというものである。このような画面形式では、天地の高さには限界があるが、画面の水平方向の長さには制約がなく、物語の展開などを長大な画面に劇的に表現することが可能であり、そこに時間的な推移を盛り込むこともできる。たとえば、『伴大納言絵巻』上巻の応天門の火災の場面は、炎上する応天門、火事見物の群衆、火災の報を聞いて現場に駆け付ける政府の役人などが、途中に「詞」を挟まず、数メートルにわたって絵のみで描写されており、絵巻の特性を生かした例として著名である。このように、「絵」の部分が長大に続き、巻物を繰り広げるにつれて画面が展開していく構図を「連続式構図」という。これに対して、巻物を机の上で広げた際に一目で見渡せる程度の大きさ(横幅50 - 60cm程度)を一画面とし、絵と詞が交互に現れる形式を「段落式構図」といい[要出典]、『源氏物語絵巻』がその典型的な例である。現存作品を見ると、「連続式構図」のもの、つまり絵巻の特性を効果的に生かした作品はさほど多くなく、「段落式構図」の作品の方が多い。
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