株主平等原則との関係について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/17 14:07 UTC 版)
「ブルドックソース事件」の記事における「株主平等原則との関係について」の解説
会社法109条1項で定める株主平等原則の趣旨は、新株予約権無償割当ての場合にも及び、本件新株予約権無償割当ては、スティールはその持株比率が大幅に低下するという不利益を受けることとなる。 株主平等の原則は、個々の株主の利益を保護するため、会社に対し、株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱うことを義務付けるものであるが、個々の株主の利益は、一般的には、会社の存立、発展なしには考えられないものであるから、特定の株主による経営支配権の取得に伴い、会社の存立、発展が阻害されるおそれが生ずるなど、会社の企業価値が毀損され、会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるような場合には、その防止のために当該株主を差別的に取り扱ったとしても、当該取扱いが衡平の理念に反し、相当性を欠くものでない限り、これを直ちに同原則の趣旨に反するものということはできない。 そして、特定の株主による経営支配権の取得に伴い、会社の企業価値が毀損され、会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるか否かについては、最終的には、会社の利益の帰属主体である株主自身により判断されるべきものであるところ、株主総会の手続が適正を欠くものであったとか、判断の前提とされた事実が実際には存在しなかったり、虚偽であったなど、判断の正当性を失わせるような重大な瑕疵が存在しない限り、当該判断が尊重されるべきである。 本件では、議決権総数の約83.4%の賛成を得て可決されたのであるから、スティール関係者以外のほとんどの既存株主が、スティールによる経営支配権の取得がブルドックの企業価値を毀損し、ブルドックの利益ひいては株主の共同の利益を害することになると判断したものということができる。 そして、本件総会の手続に適正を欠く点があったとはいえず、また、上記判断は、スティール関係者において、発行済株式のすべてを取得することを目的としているにもかかわらず、ブルドックの経営を行う予定はないとして経営支配権取得後の経営方針を明示せず、投下資本の回収方針についても明らかにしなかったことなどによるものであることがうかがわれるのであるから、当該判断に、その正当性を失わせるような重大な瑕疵は認められない。 スティール関係者は、本件取得条項に基づきスティール関係者の有する本件新株予約権の取得が実行されることにより、その対価として金員の交付を受けることができ、また、これが実行されない場合においても、ブルドック取締役会の本件支払決議によれば、スティール関係者は、その有する本件新株予約権の譲渡をブルドックに申し入れることにより、対価として金員の支払を受けられることになるところ、上記対価は、ブルドック関係者が自ら決定した本件公開買付けの買付価格に基づき算定されたもので、本件新株予約権の価値に見合うものということができる。 これらの事実にかんがみると、スティール関係者が受ける上記の影響を考慮しても、本件新株予約権無償割当てが、衡平の理念に反し、相当性を欠くものとは認められない。 なお、ブルドックが本件取得条項に基づきスティール関係者の有する本件新株予約権を取得する場合に、ブルドックはスティール関係者に対して多額の金員を交付することになり、それ自体、ブルドックの企業価値を毀損し、株主の共同の利益を害するおそれのあるものということもできないわけではないが、上記のとおり、スティール関係者以外のほとんどの既存株主はスティールによる経営支配権の取得に伴うブルドックの企業価値の毀損を防ぐためには、上記金員の交付もやむを得ないと判断したものといえ、この判断も尊重されるべきである。 したがって、スティール関係者が原審のいう濫用的買収者に当たるといえるか否かにかかわらず、これまで説示した理由により、本件新株予約権無償割当ては、株主平等の原則の趣旨に反するものではなく、法令等に違反しないというべきである。
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