松江市教育委員会による閉架措置問題
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「はだしのゲン」の記事における「松江市教育委員会による閉架措置問題」の解説
2012年8月、高知県在住の在日特権を許さない市民の会のメンバーより、本作品の10巻に旧日本軍が「中国人の首を面白がって切り落とした」「妊婦の腹を切りさいて中の赤ん坊を引っ張り出した」「女性器の中に一升ビンがどれだけ入るかたたきこんで骨盤をくだいて殺した」といった記述が証拠資料もなしに羅列してあり、「子供たちに間違った歴史認識を植え付ける」として、学校図書室から本作品を撤去する陳情が出された。この陳情は市議会において不採択とされたが、議員の中には陳情内容に同調する意見もあったことから、松江市教育委員会は教育的見地に基づく再検討を行い、2012年12月、『はだしのゲン愛蔵版』(汐文社発行)全10巻を「描写が過激」として、本棚に置かず倉庫に収める閉架措置にするように口頭で要請。市内全49校(当時)のうち本作品全10巻を保有する39の小中学校がこれに応じた。 汐文社の政門一芳社長や京都精華大学マンガ学部の吉村和真教授は、今回の閉架措置による戦争体験の継承の喪失・風化を危惧している。下村博文文部科学大臣は松江市の閉架措置について、子供の発達段階に応じた教育的配慮は必要として、「学校図書の取り扱いについて学校に指示するのは、教育委員会の通常の権限の範囲内」として問題が無いことを述べている。 2013年8月22日、日本図書館協会は『中沢啓治著「はだしのゲン」の利用制限について(要望)』を発表した。同協会は松江市教育委員会による閉架措置が、「図書館の自由に関する宣言」(1979年、総会決議)に違反していると指摘。同宣言では国民の知る自由を保障することを、図書館の最も基本的な任務と位置づけ、図書館利用の公平な権利を年齢等の条件によって差別してはならないこと。また、ある種の資料を特別扱いしたり、書架から撤去するなどの処置の禁止されていることが、同宣言に明記されていると指摘した。 2013年8月26日に開かれた松江市教育委員による臨時会議の結果、「教育委員会が学校に閲覧制限を一律に求めたことに問題があり、子供に見せるか見せないかは現場の判断に任せるべきだ」との意見から、全会一致で閲覧制限の撤回が決定された。 2013年10月に行われた調査では、松江市内の分校を除く49校のうち、はだしのゲンを所蔵する43校中、41校で生徒が自由に閲覧できるようになり、1校が検討中、1校が原則閉架で、所蔵しない学校のうち2学校が生徒の希望であらたに購入を検討していることが明らかになっている。
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