抗菌薬による治療
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 04:58 UTC 版)
抗菌薬は細菌感染を治療したり予防するために用いられるが、メトロニダゾールのように原虫感染症に効果を示す物もある。 細菌感染症に対する化学療法に抗菌薬を用いる場合は、感染起因菌の抗菌薬に対する感受性を調べた上で、投与する抗菌薬を選択する事が理想である。しかし、ある症状が感染に起因することが疑われ、かつ、それを起因する病原体が明らかでない場合は経験的治療が行われる場合もある。と言うのも、特に重篤な感染症を生じている場合などは、できるだけ速やかに抗菌薬を投与する必要性に迫られるからである。つまり、病原体の調査を待っていると、患者が感染症のために死亡しかねない場合などが、これである。そのため、重篤な感染症患者が運ばれてくることのある多くの救急部門では、抗菌薬を備えている。経験的治療においては結果が出るのに数日かかる培養検査の結果を待たずに、症状に基づいて広域スペクトルの抗菌薬が投与される。もっとも、厳密に感染起因菌を特定するためには培養などによる検査が必要だが、症状から病原体の推定が可能なこともある。例えば、蜂巣炎の病原体は、レンサ球菌やブドウ球菌が尤もらしいと推定できるため、培養で陽性が得られなくとも抗菌薬による治療を開始できる。このように、ある程度、有効な抗菌薬を絞り込むことが可能な場合がある。また、手術を避けるために急性虫垂炎に対して、抗菌薬が処方される場合もある。 一方で、病原微生物が予め判明していたり、検査により特定された場合には、抗菌スペクトルの狭い抗菌薬が投与される。抗菌薬の投与に必要な費用を低減し、無効なな抗菌薬投与による有害作用の発生を防ぎ、かつ耐性菌の出現を抑制するためには、病原体の特定が重要である。培養によって病原体が特定された場合、次に薬剤感受性試験を行い、病原体が特定の抗菌薬の存在下で発育可能か試験する。薬剤感受性試験で得られたMICの値を基に、病原体が各薬物に対し、感受性か、耐性か、あるいは中間かを決定する。感受性の場合は、その抗生物質の常用量で、その感染症を治療できることを意味する。 抗菌薬が予防的に用いられる場合もあるが、予防的な投与は免疫抑制薬を服薬中の者、ガン患者のような免疫系の弱った者、これから手術が行われる患者のような本来は無菌的であるべき身体の内部への細菌の侵入が手術操作によって起きてしまう者への投与に限定され、特にヒト免疫不全ウイルス感染者における肺炎の防止のために投与される。外科手術における抗菌薬の投与は、切開部位の感染を防止する。予防的な抗菌薬の投与は、口腔外科的な手術で重要な役割を担い、菌血症やそれに続く感染性心内膜炎を防止する。また、好中球減少症における感染防止にも使用され、これは特に化学療法によるがん治療を受ける者に対して行われる。 ただし、抗菌薬への耐性菌が頻繁に検出されるようになってからは、それ以前に比べて予防投与の効果が低減している可能性もある。 また、抗菌薬の場合は、仮に処方が適切であっても、患者の服薬コンプライアンスが悪いと、これも耐性菌の出現リスクを増やすとして問題視される。
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