批准手続き
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 05:58 UTC 版)
条約修正に関する従来の規定では、対象となる条約は後発の条約によってのみ修正され、その修正条約が発効するには全加盟国の批准がなされなければならない。 アイルランドを除く全ての加盟国は、それぞれの議会において批准手続きを完了させた。アイルランド最高裁判所はかつて単一欧州議定書に関する裁判で、基本条約の根本的な変更は、国民に由来する主権についてのアイルランド憲法の規定にかかわるものであるという判決を下しているため、ニース条約の批准に先立って憲法改正手続きを実施しなければならず、その手続きは国民投票によるものとされていた。 2001年6月のアイルランドの国民投票でニース条約批准を拒否する結果となり、これは欧州統合を進めてきたヨーロッパの政界に驚きをもって受け止められた。この国民投票の投票率自体は34%と低く、アイルランドの主要政党が余り熱心に批准についての議論をせず、これまでの基本条約と同様に、有権者の多くがニース条約についても賛成するだろうと当て込んでしまった結果であると言える。ところが多くの有権者は条約の内容に不満を抱き、ニース条約で小国が低く扱われるものと判断したのである。このほかアイルランドの中立性に関して、条約の影響に一部の有権者は懐疑的であったということもあった。また欧州連合の主導権に関して、実態にそぐわない面や傲慢さがあるものと判断され、これにより各国首脳は条約に対する批判に耳を傾けなければならないという認識を持つようになった(同様の例としてデンマークでの国民投票でマーストリヒト条約が反対されたことがある)。結局は、反対派がただ投票をせずとも、「反対票を投じよう」という運動はニース条約の意義に関して重大な問題を投げかける効果があったというために、ニース条約は否定されてしまったのである。 アイルランド政府は、欧州理事会がアイルランドの軍事政策と距離を置くとするセビリア宣言を受けて、2002年10月19日、再度ニース条約に関する国民投票を実施した。この投票のさいに、条約批准に当たって2つの重要な条件を課しており、1つが「緊密化した協力」についてドイル・エアラン(議会下院)の承認を要するというもので、もう1つが欧州連合の共通防衛政策にアイルランドは参加しないとするものである。主要政党や、アイルランド出身の欧州議会議長パット・コックスやチェコ大統領ヴァーツラフ・ハヴェル、アイルランド元大統領パトリック・ヒラリー、元首相ギャレット・フィッツジェラルドら欧州統合主義を掲げる著名人による遊説やメディアへの登場など大規模な賛成運動が展開された。投票の結果、前回の国民投票の2倍近くとなる60%が賛成票であり、すべての選挙区において賛成が反対を大きく上回った。 これにより全加盟国がニース条約に批准したことになった。ニース条約は2002年末までに批准を完了することとされており、批准が完了されていなければ破棄されることとなっていた。
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