戸主権・戸主の義務
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 14:33 UTC 版)
戸主は、家の統率者として家族に対する扶養義務を負う(ただし、配偶者、直系卑属、直系尊属による扶養義務のほうが優先)ほか、主に以下のような権能(戸主権)を有していた。 家族の婚姻・養子縁組に対する同意権(改正前民法750条)ただし、離籍の制裁を覚悟するなら、戸主の同意の無い婚姻・縁組を強行することは可能(改正前民法776条但書・849条2項) 家族の入籍又は去家に対する同意権(ただし、法律上当然に入籍・除籍が生じる場合を除く)(改正前民法735条・737条・738条) 家族の居所指定権(改正前民法749条) 家籍から排除する権利家族の入籍を拒否する権利戸主の同意を得ずに婚姻・養子縁組した者の復籍拒絶(改正前民法741条2・735条) 家族の私生児・庶子の入籍の拒否(改正前民法735条) 親族入籍の拒否(改正前民法737条) 引取入籍の拒否(改正前民法738条) 家族を家から排除する(離籍)権利(ただし未成年者と推定家督相続人は離籍できない)居所の指定に従わない家族の離籍(改正前民法749条) 戸主の同意を得ずに婚姻・養子縁組した者の離籍(改正前民法750条) 戸主の権利義務は少なくとも起草者の主観においては、妥当な範囲に制限しようとする意図が働いていた。 法律は、依然として、戸主といふものを認めてゐるが、唯だ、其一家の代表者として認めてるほどの事で、決して、生殺与奪といふが如き、強力の権力を認めてゐない。故に、家族に対して、懲罰権をもたぬのみか…戸主は、相続によって、其家の財産を持ってゐるから、家族を扶養する義務を負はした。かうなってみれば、其財産は、たとへ、戸主の名義でも、其実は、其一家の共有と同じ事だ。…要するに…戸主といふ者は、殆んど、必要がない様になった。…男女が、互に、想ひ想はれて夫婦になり度いといふても、戸主、又は、親が許さぬといふ場合…其戸主の監督を離れて離籍する事の出来るやうにしてある。 — 梅謙次郎「二十世紀の法律」『読売新聞』1900年(明治33年)1月5日 戸主は絶対にその家族の行動を束縛すること能わず。故に家族にして独立するの力あらば戸主の束縛を受けず自己の意に従いて行動を為すことを得べし。唯戸主の恩恵に頼り生活を為さんと欲せば唯々、諾々その意に従うの外なきなり。是れ今日の時勢に於いては最も適当なる程度に於いて戸主権を保護するものと謂うべきか。 — 梅謙次郎『民法要義』
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