懐郷文学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/02 04:31 UTC 版)
反共文学と同系統である懐郷文学は中国大陸の記憶に基づく文学作品であり、その担い手は国民政府の支持を受けた外省人作家である。反共文学に比べ母語を一にする本省人にも比較的受け入れられたのが特徴である。本省人にも受け入れられた代表的な作品として、封建社会への批判と個人の描写が特徴とされる林海音による『城南旧事』が挙げられ、台湾社会の価値観に対し少なからずの影響を与えている。また広義の懐郷文学としては李敖や尼洛のような外省人作家による作品以外に、東南アジアの華僑作家による馬華文学及び1970年代以降に登場した三三文学が含まれる。 若い世代により形成された三三文学は三民主義の三と、三位一体の三を組み合わせた概念である。胡蘭成と張愛玲の影響を深く受けた朱天文、朱天心、馬叔礼、謝材俊、丁亜民、仙枝などが中心となり、伝統的な中国文化と紅楼夢研究である紅学への傾倒による文学性の強調がその特性にある。この他、三三文学では保釣運動、李敖の全盤西化論、温瑞安による神州詩社などの運動への集結もその特徴である。しかしその文学運動はその活動開始後まもなくその行動主義が国家文化及び政治意識形態と衝突すると共に「情」と「愛」を理想に掲げており、1980年代初頭の外省人の文学意識の主流を占めるに至った。 このように中国文学と伝統思想を擁護した三三文学であるが、その後の政治潮流の中で次第に影響力を失いつつある。しかしその源流である懐郷文学は北京語が台湾で優位な言語地位を占めている結果、現在でも一定の市場を獲得している。
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