慣性、弾性支持を考慮する場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/20 21:40 UTC 版)
「蛇行動」の記事における「慣性、弾性支持を考慮する場合」の解説
実際の輪軸は支持剛性が与えられており、ある程度の限界速度までは蛇行動は抑制されている。台車と輪軸の連結構造は、輪軸に軸受を挿入し、その上に軸箱が乗り、軸箱と台車枠がコイルばねや支持ゴムで繋がる構造が取られる。このような物体の慣性、要素間の剛性なども考慮した実際的な車両運動の解析においては、車輪・レール間のクリープ力も考慮して運動方程式を求める必要がある。蛇行動は主に左右振動・ヨーイング振動に関する現象なので、解析においては1輪軸の左右、ヨーイング方向に関する運動方程式が最も基本となる。そこで右図のような、輪軸と常に一定距離を保ち並走するような固定端を想定し、これに弾性支持された1輪軸が一定速度 V {\displaystyle V} で前進する場合を考える。解析を容易にするために輪軸の動きは小さいと考え、この場合の運動方程式は以下のようになる。 m y ¨ + 2 κ 22 V y ˙ + k y y − 2 κ 22 ψ = 0 {\displaystyle m{\ddot {y}}+2{\frac {\kappa _{22}}{V}}{\dot {y}}+k_{y}y-2\kappa _{22}\psi =0} … (9) m i 2 ψ ¨ + 2 κ 11 b 2 V ψ ˙ + 2 κ 11 b λ r y + k ψ ψ = 0 {\displaystyle mi^{2}{\ddot {\psi }}+2\kappa _{11}{\frac {b^{2}}{V}}{\dot {\psi }}+2\kappa _{11}{\frac {b\lambda }{r}}y+k_{\psi }\psi =0} … (10) ここで、 m {\displaystyle m} :輪軸質量、 i {\displaystyle i} :輪軸のヨーイング回りの慣性半径、 k ψ {\displaystyle k_{\psi }} :輪軸に対するヨーイング剛性、 k y {\displaystyle k_{y}} :輪軸に対する左右支持剛性、 b {\displaystyle b} :中立位置での左右車輪接触点間隔の1/2、 r {\displaystyle r} :車輪平均半径、 λ {\displaystyle \lambda } :踏面勾配、 κ 11 {\displaystyle \kappa _{11}} :縦クリープ係数、 κ 22 {\displaystyle \kappa _{22}} :横クリープ係数である。図のような前後支持剛性が与えられている場合は k ψ {\displaystyle k_{\psi }} は以下のようになる。 k ψ = k x b 1 2 {\displaystyle k_{\psi }=k_{x}b_{1}^{2}} … (11) ここで、 k x {\displaystyle k_{x}} :輪軸に対する前後支持剛性、 b 1 {\displaystyle b_{1}} :輪軸の前後支持点の左右間隔の1/2である。 (9)、(10)式は、解析を簡単にするために輪軸の動きは小さいと前提を置き、以下のように簡略化を行い導出される。 踏面勾配は一定とする。 輪軸のローリング角の影響は無視する 左右車輪の接触角度差の影響は無視する スピンクリープによる力は無視する また、(9)、(10)式において、慣性と剛性を無視すれば( m = 0 {\displaystyle m=0} 、 k x = k y = 0 {\displaystyle k_{x}=k_{y}=0} )、(3)、(5)式が得られ、幾何学的蛇行動の運動方程式と一致する。 蛇行動が発生し出す限界の速度である蛇行動限界速度は、(9)、(10)式において縦クリープ係数と横クリープ係数は等しい( κ 11 = κ 22 = κ {\displaystyle \kappa _{11}=\kappa _{22}=\kappa } )とし、その上にさらに近似化をして以下の式が得られる。 v c = S 1 b 2 f y 2 + i 2 f ψ 2 b 2 + i 2 {\displaystyle v_{c}=S_{1}{\sqrt {\frac {b^{2}f_{y}^{2}+i^{2}f_{\psi }^{2}}{b^{2}+i^{2}}}}} … (12) f y = 1 2 π k y m , f ψ = 1 2 π k x b 1 2 m i 2 {\displaystyle f_{y}={\frac {1}{2\pi }}{\sqrt {\frac {k_{y}}{m}}},\quad f_{\psi }={\frac {1}{2\pi }}{\sqrt {\frac {k_{x}b_{1}^{2}}{mi^{2}}}}} ここで、 v c {\displaystyle v_{c}} :蛇行動限界速度、 S 1 {\displaystyle S_{1}} :幾何学的蛇行動波長(=(8)式)である。(12)式より、蛇行動限界速度を大きくして高速でも蛇行動を発生させないためには、幾何学的蛇行動波長を大きくすることの他に、輪軸の質量・慣性半径(=慣性モーメント)を小さくすること、輪軸の支持剛性を大きくすることが有効であることが分かる。
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