意識に作用する局所的な脳損傷
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/08 04:07 UTC 版)
「意識に相関した脳活動」の記事における「意識に作用する局所的な脳損傷」の解説
広範囲に渡る脳損傷とは対照的に、正中部 (または傍正中部) の皮質下の脳構造の比較的に個別的な両側の損傷でも意識の完全な消失が起きる。従って、このような脳構造は (代謝的、電気的活動によって決定される) 脳の覚醒レベルを調節し、あらゆる形での意識の形成に必要な可能要因の一部であると考えられる。このような脳構造の例として、(橋、間脳、視床下部後部などの) 脳幹上部にある (片側につき) 2ダース以上の神経核から構成される網様体賦活系 (RAS : reticular activating system) がある。これらの神経核 (独自の細胞構築学的、神経化学的な特性を持った神経細胞の3次元的集合) はアセチルコリンやノルアドレナリン、セロトニン、ヒスタミン、オレキシンなどの異なる神経伝達調節因子 (neuromodulator) を放出する。それぞれの軸索は脳の様々な領域に広がっていて、これらの神経伝達調節因子は視床や前頭の活動性を調節し、覚醒と睡眠の状態変化や行動的、脳活動的な覚醒レベルの変化を仲介している。網様体賦活系の神経核の急性の切除は意識の消失と昏睡を引き起こす。しかし結果的に、視床と前頭の活動は復活し、意識が戻ることもある (Villablanca 2004)。他の意識の可能要因として、5つかそれ以上存在する視床の髄板内核 (ILN : intralaminar nuclei) がある。これらは多くの脳幹の神経核からの入力を受け大脳基底核への強い出力と大部分の新皮質のI層への広がった出力を持つ。(1 cm3かそれ以下の) 比較的小さい両側の視床髄板内核の切除により、気づき (awareness) が完全にノックアウトされる (Bogen 1995)。 要約すると、視床や間脳、橋にある、異なる化学的特性を持つ神経核の多くは、脳の覚醒を十分な状態にし、あらゆる体験を可能にする機能を持つ。これらの神経核は意識の可能要因に属する。反対に、意識的知覚の特定の内容は大脳皮質や関連する二次的な構造である扁桃体や視床、前障、大脳基底核などの神経細胞によって仲介されると考えられる。
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