悔悛する聖ヒエロニムス (エル・グレコ)とは? わかりやすく解説

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悔悛する聖ヒエロニムス (エル・グレコ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/15 23:41 UTC 版)

『悔悛する聖ヒエロニムス』
スペイン語: San Jerónimo penitente
英語: Penitent Saint Jerome
作者 エル・グレコ
製作年 1600-1605年ごろ
種類 キャンバス上に油彩
寸法 105 cm × 90 cm (41 in × 35 in)
所蔵 王立サン・フェルナンド美術アカデミーマドリード

悔悛する聖ヒエロニムス』(かいしゅんするせいヒエロニムス、西: San Jerónimo penitente: Penitent Saint Jerome) 、または『聖ヒエロニムス』(せいヒエロニムス、西: San Jerónimo: Saint Jerome) は、ギリシャクレタ島出身で主にマニエリスム期のスペインで活動した画家エル・グレコキャンバス上に油彩で制作した絵画である。制作年代については諸説があるが、1600 - 1605年ごろという説が妥当であるように思われる[1]。作品は1984年に購入されて以来[2]マドリード王立サン・フェルナンド美術アカデミーに所蔵されている[1][2]

主題

本作の主題となっている聖ヒエロニムスラテン教会英語版の4大教父の1人である[1][2]。341年にダルマチアで生まれ、父に教わった読み書きの術をローマで磨いた。さらに神学者や聖書註解者と交流を持つために各地を巡り、353年からは5年間、ギリシアの荒野で隠遁生活を送った。ローマにもどってからは、卓越した語学力と知識を駆使し、旧来の聖書ラテン語訳文を原典と照合した上で改定した[3] (ウルガタ[1])。ヒエロニムスは砂漠隠修士としても知られ、その場合、石で自身の胸を打つ姿で描かれる。また、彼は刺さったトゲに苦しむライオンを助けたことから、ライオンとともに描かれることが多い[1]

作品

エル・グレコによるヒエロニムスを主題とした絵画は、緋色法衣を纏い、ビザンチン美術イコンのように正面を向く枢機卿姿のヒエロニムスと、悔悛し、苦行する裸のヒエロニムスに分類される。さらに後者は、全身像のヒエロニムス像と本作のような半身像に分けられる[1]。「悔悛する聖ヒエロニムス」の主題は東方教会の強い精神性を反映し、トリエント公会議 (1545-1563年) 以降の対抗宗教改革時代における2つの基本的理念であった「祈り」と「悔悛」を強調したものである[2]。本作は、ヒエロニムスのそうした姿を表わすエル・グレコの作品中、スコットランド国立美術館 (エジンバラ) にある作品とともに最も質が高いものと見なされている[1][2]

画面には、暗褐色の岩を背景にして、左手に持つ十字架イエス・キリスト像を凝視しながら右手の石で自身の胸を打つ、たくましい体躯のヒエロニムスの姿が表されている[1]。白髪と白い髭のある顔の表現はエル・グレコの聖人像の中で比較的リアルであり、がっしりとした骨格、筋肉、血管なども粗い筆致ではあるが、克明に描かれている。彼は腰に緋色の法衣を纏い、背後には枢機卿の緋色の帽子が描かれている。彼は枢機卿ではなかったが、初期キリスト教時代の教会ではローマ司教が後に枢機卿に託される仕事を行ったからである[1]

ヒエロニムスの前には、彼が聖書をラテン語訳したことを象徴する書物と、悔悛および現生の虚しさを象徴する髑髏砂時計が置かれている。画面上部左側には、エル・グレコ特有の空がツタの葉ともに小さく描かれ、ヒエロニムスが洞窟内で悔悛していることが示唆されている[1]

エル・グレコの「聖ヒエロニムス」

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j 『エル・グレコ展』、1986年、200頁。
  2. ^ a b c d e San Jerónimo”. 王立サン・フェルナンド美術アカデミー公式サイト (スペイン語の英訳). 2025年9月1日閲覧。
  3. ^ 「聖書」と「神話」の象徴図鑑 2011年、152頁。

参考文献

外部リンク




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