性に関するミーム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 06:19 UTC 版)
人類の遺伝子は性をめぐって進化してきた。なぜなら、結婚相手を見つけられない宿主の遺伝子は後世に残らないからである。そのため宿主が結婚相手を見つけ、子孫を増やすことができる方向へ遺伝子は進化してきた。そうした遺伝子進化の結果、強い性の衝動と様々な脳の傾向が生まれた。 性をめぐって進化してきた脳の傾向にミーム進化は導かれ、文化はミーム進化の結果である。つまり性の衝動が文化を形成する力となっている。例えば、流行の服など性的魅力を高めたい人をターゲットにした産業もあれば、権力やビジネスなどの階層構造といった性の衝動が原動力になっているとは気づきにくいものもある。 利己的遺伝子の考え方から推測すると、性をめぐった遺伝子の進化は以下のようであったと考えられる。動物が性交渉によって子孫を作るようになった時から始まった進化は、結婚相手を見つけられた動物のみがDNAを複製することによって進んでいく。最初の頃の生物は、男性と女性の区別がつかなかったかもしれないが、性別の判別ができた方が子孫を残すのに効率的である。男性と女性の区別がつくことができるように進化すると、性的魅力のある生物の方が結婚相手を見つけやすくなる。こうして、進化が進むほど生物は性的魅力を高めていく。 DNAの視点に立てば、DNAは宿主に結婚を通じてできるだけ多くの子孫を増やしてもらう必要があった。そのため男性のDNAは、できるだけたくさんの女性と性交渉をする方が有利であった。一人の女性とだけ関係を持つDNAは進化の上で不利である。つまり、男性の脳はできるだけたくさんの女性と関係を持とうとする衝動を受け継いでいる。 一方、女性は一年に一度ぐらいしか子供を産めない。つまり、DNAの複製を作るチャンスが限られており、それに比べて求愛は多く、よいDNAを持つ男性を選ぶように進化した。よいDNAとは、例えば健康な体、あるいは自分と共通部分を持つDNAといった点である。クジャクの雄が羽を美しく進化させたのは、雌が異性を選ぶ側であり、雄が選ばれる側だったからだと考えられる。 女性が男性を選ぶ二つ目の基準は、子供達を育てる父親の役割をちゃんとしてくれるかどうかである。有史以前は、男らしい男性を生物学的父親にし、子供の育児に向いた男性を「主夫」として迎えるのが理想的であった(この場合、父親は二人になる)。 男性は女性を惹きつけるために、進化が二つの方向へ分かれた。一つはより強く、よりハンサムになるように進化する方向である。もう一つは主夫タイプの男性であり、良い夫、良い父親となっていく方向である。後者の男性は、男を騙す女性と騙さない女性を見分けられるように進化したとブロディは言う。 また男性は、権力を熱望するように進化していった。なぜなら、階層構造の中で、できるだけ上の地位にいれば、より多くの魅力的な女性と結ばれ、子供達により多くのものを与えられるからである。そのため、男性が地位に対して持つ一般的な感覚は優位や支配といったものである。一方で、女性は地位というものには魅力や人気といったものを重視する感覚を持っている。
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