性の二倍のコスト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/03 09:57 UTC 版)
オスとメスはつがうためにお互いを見つける必要があるが、これは性成熟した個体と出会っても半数とは交配できないことをしめす。あるいは全ての個体がメスの場合よりも、繁殖効率は半分に低下する。無性生殖で増える生物と比べて、有性生殖は非効率的に見える。これをメイナード=スミスは性の二倍のコストと呼んだ。雄が雌の子育てを手伝い、より多くの子を残せるならこの問題は解決する(あるいは二倍以下に軽減される)。しかし多くの動物ではオスは子育てをせず、資源を性選択へ振り分けることがある。したがって雄の二倍のコストと呼ばれることもある。 ほぼすべての脊椎動物が有性生殖を行うという事実は、組み替えが何らかの有利さをもたらしていると考えられる。従来は三つの説があった。 一つは、無性生殖ではある系列で有利な突然変異が起こったとしても、必ずしもそれを持った個体が生き延びるとは限らない。有性生殖であれば有利な変異を取り込むことができる。ここから、同じ種に属する生物が共同で利用可能な遺伝子プールと言う概念が生まれる。 二つ目は、ある種の遺伝子は別の遺伝子とペアを形成することで有利さを発揮することがあるが、有性生殖は遺伝子の混ぜ合わせ作業なので、そのような有利な遺伝子のペアが出現する可能性を増加させる。ただしその組み合わせは一代限りで、次の世代には失われてしまう。またどちらの説も有利な遺伝子だけでなく、不利な遺伝子を集める効果もあり、単純に利点と見なすことはできない。 第三に、多様な遺伝子のセットを持つ子孫を作り出すことは子孫の適応力を高めることができる。しかし安定した環境では遺伝的多様性が必ずしも高い適応度をもたらすとは限らない。仮に、遠い子孫にとっては(環境の激変などで)遺伝的多様性が有利になるとしても、短期的な利益がないのならそのような形質は進化しないはずである。
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