後世の血統分析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/19 04:45 UTC 版)
「スカパフロー (1914年生まれの競走馬)」の記事における「後世の血統分析」の解説
ファロス、フェアウェー、フェアアイルの全兄弟妹たちは、父ファラリス、母スカパフローという配合によって誕生している。この配合では、血統表中にセントサイモンの近親交配が発生していて、セントサイモンは父方の4代前と母方の3代前に登場する。その血量を計算すると18.75%となり、「奇跡の血量」と呼ばれる値になっている。このため両馬は、ダービー伯爵が「奇跡の血量」にこだわって競走馬の配合を行っていたことを示唆する好例と扱われることもある。 しかし、1957年に刊行された『サラブレッドの世界』では、「血量が特定の値となるセントサイモンの近親交配」がスカパフローの産駒たちの成功の鍵だったという考え方を否定している。同書の著者レスター準男爵は、ファラリスが種牡馬だった時期のすべての繁殖牝馬を調べ上げ、セントサイモンの主要な直系を父とする繁殖牝馬を父別に集計した。その結果、ウィリアムザサードを父とする繁殖牝馬76頭、父セントフラスキンの牝馬76頭、父デスモンドの牝馬73頭、父チョーサーの牝馬66頭などとなっており、そのうち父チョーサー以外の繁殖牝馬の産駒の成績は、父チョーサーの繁殖牝馬の産駒よりも、平均してはるかに優れていた。このことは父をチョーサーとする繁殖牝馬が優秀だったわけではないことを示している。 それなのに、父をチョーサーとする繁殖牝馬にファラリスを配合して生まれた産駒だけが、それ以外の場合に較べて3倍以上の賞金を稼いでいた。これらの繁殖牝馬の産駒のうち、ファラリスが種牡馬として現役だった時期のものに限定すると、優秀な産駒の2頭に1頭はファラリスを父としていた。 仮に、セントサイモンの近親交配が一定値になったものに優れた効果が現れるとするならば、チョーサー以外のセントサイモン系種牡馬を母の父とする繁殖牝馬とファラリスの配合でも、その近親交配の効果が現れるはずである。しかし実際にはそうなっておらず、チョーサーを母の父とする場合に限って優れた結果が出ていた。レスター准男爵によれば、この事実は母の父チョーサー、父ファラリスという組み合わせに特別な「親和性(ニック)」があったことを示すという。 同書によれば、獲得賞金をもとに計算すると、スカパフローが生産された当時の基準に照らして、父馬のチョーサーは「一流のクラシックホース」ではなく、「立派なハンデキャップホース」どまりだったとしている。そしてファロス・フェアウェイらの父となったファラリスも、同様に一流馬ではなかった。一流馬ではない馬どうしの組み合わせからこれほどまでに傑出した競走馬が輩出されたのは、この「親和性(ニック)によるものだったとしている。 イギリスのサラブレッド研究家ピーター・ウィレットは『サラブレッド』(原題“The Throughbred”)(1970年)のなかで、チョーサー、ファラリスを評していずれも「単に優れたハンデキャップ馬とみなされた程度」の馬であり、「最高級の競走馬ではなかった」としている。そしてレスター準男爵と同様に、ファラリスを父とする一流馬の大半は、母の父をチョーサーとしていることを指摘した。ウィレットは、チョーサーとファラリスのあいだの「血液親和性(ニック)」は、「サラブレッドの発展上最も強力なものの一つ」だったとした。 ウィレットによれば、ファラリスは明らかにスタミナを欠く競走馬であったと指摘し、もしもチョーサーとファラリスがともにダービー伯爵の生産馬でなかったなら、この2頭の配合で競走馬を生産しようとする者はいなかっただろう、と述べている。ウィレットは、一流馬でない馬同士の配合から一流馬が輩出されたことについて、ニックとセントサイモンの近親交配によって「両親と祖父母をしのぐほどの電気火花が散った」と表現した。
※この「後世の血統分析」の解説は、「スカパフロー (1914年生まれの競走馬)」の解説の一部です。
「後世の血統分析」を含む「スカパフロー (1914年生まれの競走馬)」の記事については、「スカパフロー (1914年生まれの競走馬)」の概要を参照ください。
- 後世の血統分析のページへのリンク