彼らが確立したもの
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/03 05:50 UTC 版)
「ソクラテス以前の哲学者」の記事における「彼らが確立したもの」の解説
ソクラテス以前の哲学者の多くは、自然と宇宙を自ら思索の対象とした。そのため彼らの思想は宇宙論あるいは自然学としばしば呼ばれる。彼らは外界の現象について、それまでの擬人的な神話による説明を排除し、より一般化された非擬人的な説明を求めた。たとえば雷はゼウスが怒り雷撃を投げているのではなく、雨雲が空気の裂け目を生じその裂け目から嵐が吹き出し光がみえているのだと説明される。 この姿勢は盲信的な宗教から離れ哲学、さらには科学へ至る考え方の転換点として、世界史的にも画期的であった。 彼らが説明を試みようとしたものには、 すべてのものはどこからくるのか?(アルケー(事物のはじめ)は何か?) すべてのものは何から作られているのか? 自然の中にあるものが多く存在するとはどういう事か? なぜ数というひとつのものでそれらを説明できるのか? などがある。 イオニアの自然哲学は宇宙生成論(宇宙はなにから生じるのか)から出発し、次第に身の回りの現象を説明する方向へと向かった。個々の現象についてなぜそのような現象が生起するのかが問われ、さらにそのような現象すべてを統御する原理が求められた。「ロゴス」と呼ばれたその統制原理は、火や数という具体的なもののなかに求められた。ここから数の性質を問い、派生的な諸概念、たとえば無限についての探求が行われた。 また自然現象への問いは、宇宙の究極的構成原理としての原子を仮定し、原子の機械論的運動で世界を描像する原子論にゆきついた。こうした原理への問いはまた、既存の社会、都市国家のありようを反省し、そこでのふるまいを慣習によってではなく論理によって再び規定しようとするソフィストたちの登場にもつながっていく。あるいはまた、アナクサゴラスのように擬人的な神の描写に対する懐疑と拒否にもつながっていった。 彼らの提案した現象記述は、観察にもとづくとはいえ思弁的であり、後世の自然科学からは否定される。後世の学者たちは、ソクラテス以前の哲学者たちが提示した答えのほとんどを真実とは受け取らなかったが、彼らが答えを求めようとした質問、さらに問いを立て探求するという態度はそのまま受け継がれた。 しかし、近代に入っての多くの自然科学上の発見によって、原子論のようにその論理が再評価されたものもある。
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