形骸化の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/23 22:09 UTC 版)
取締役会は小規模会社と大規模会社の両方において形骸化が激しいといわれる。 小規模会社における問題 取締役会を設置しておくためには、取締役が最低3名必要となるため、小規模会社においては代表取締役(社長)が経営を独占し、他の取締役は家族親戚等から名目的に選ばれたのみで監督責任などは全く機能しないというケースが多い(同族経営)。しかも、そういった小規模な会社が日本の株式会社のほとんどを占めている。会社法が施行された現在では、取締役会を廃止することで、名目的な取締役を置かないことも可能となった。 大規模会社における問題 一方、大規模な会社においても異なった意味で取締役会の形骸化が生じている。取締役会設置会社における取締役の本来的な必要性や適任性にかかわりなく、管理職・幹部従業員の出世コースの延長上に取締役が位置付けられ、取締役会の議長を務める経営トップの意向によって取締役が選任される人事慣行があるため、取締役会が大きくなりすぎ機動的な意思決定ができない、あるいは取締役会の決議は大抵@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}全会一致によってなされ[要出典](法律上は過半数で足りる、369条1項)、経営のチェック機能が働かないといわれる。代表取締役以下の会社の業務執行を監督し、株主の利害を代弁する取締役としての意識よりも、経営トップに対する部下意識や監督される側への身内意識が強いため、「なあなあ」でことが済まされ、犯罪や不祥事、経営上の問題を隠蔽する体質がしばしば批判の対象となる。 1997年(平成9年)のソニー以降、意思決定の機動性を高めるために執行役員制度を導入して取締役会の規模縮小を行う、あるいは社外取締役を加える大企業が大幅に増えた(会社法においては、第2条15号において社外取締役の定義が明確化された)。日立製作所や東芝などのように社外取締役を「取締役会議長」として取締役会の議事進行権を与えることで、取締役会の改革を図るケースもある。従来の取締役の数を削減する代わりの処遇方法として執行役員を置くこともあれば、むしろ業務執行取締役や執行役員に業務執行を委ね、取締役会は経営のチェックに専念することで経営の機動性を高めるケースもある。また、従来から常務会または経営戦略会議といった会議体を設けて少数の業務に精通した取締役によって日常業務を処理し、重大案件については取締役会全体で承認を受けるといった形を採ることもあった。 これらの制度は法的な裏付けがないためにその権限が曖昧になることも多かった。そこで法は業務執行取締役(363条1項2号)や特別取締役(373条)、さらには委員会設置会社・執行役という制度を設けている。なお、特別取締役は旧商法下では重要財産委員会として導入された制度を引き継いだものである。また、上場企業であっても実際にはほとんど取締役会(会議)が開かれていない事例が最近明るみにでた。
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