彦一の生き傘
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/05/05 03:12 UTC 版)
彦一は遊び好きのために生活の金がなくなった。このままではどうにもならないと思い、傘を張って生計を立てることにした。しかし、とりわけ名の知れた傘屋でもない限り、傘張りで生計を立てるのは難しい。そこで、彼は二階の軒先に傘を吊し、店の看板とした。その傘は不思議なことに、晴れていれば独りでに閉じ、雨が降っていれば独りでに開くのだ。そんな噂が評判を呼び、傘屋は大繁盛した。しかし、その噂を聞き付けた殿様が、家来を彦一の家へ遣わし、「生きていると評判の傘を譲って欲しい」と言い出す。困ったのは彦一で、実はあの傘は人に見られないうちに、こっそりと開閉させていたのである。そのため、「あの傘は二つとない大事な家宝なので譲るわけにはいかない」と一度は断ったが、「金はいくらでも払う」と言われたので、彦一は仕方なく大金と引き替えに傘を売ることにした。そして城の軒先には何の変哲もない傘が飾られることになった。殿様は雨が降るのを楽しみにしていたが、天気は日照り続きで、雨は降らず仕舞いだった。一ヵ月も経ってやっと雨が降り出し、待ちに待った殿様が傘を覗き込む。しかし、何時間経っても傘は全く開く気配がなかったので、怒った殿様が彦一を呼び出した。問題の傘を見せられた彦一は「こいつは大変だ。殿様が傘に食べ物をやってなかったから、傘は飢えて死んでしまったのじゃ」と告げると、殿様は呆れてひっくり返ってしまうのだった。似たような落ちの話で「彦一の生き絵」というものがある。絵の女性に食べさせてやらなかったから衰弱して傘を開けなくなったというものである。
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