廃倉庫の再利用と不動産業
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 19:25 UTC 版)
この物流高度化の流れに応えられない老朽化した倉庫は、廃業してオフィスビルかマンションか駐車場になる場合が多い。 現に、日本国内の多くの倉庫業者の利益の源泉は、かつて川や運河沿い、古い幹線道路沿いなどに持っていた倉庫を取り壊して作ったオフィスビルやマンション、ショッピングセンター等の経営による不動産賃貸業である。老舗の倉庫業者は、地価の安い時代に買った多くの土地資産(いわゆる含み益)を所有することから、その資産の有効活用の行方をめぐりしばしば株式公開買い付けによる企業買収の対象となる。 コンテナリゼーションにより貨物が新型のコンテナ港湾に移っていく流れの中で、欧米の多くの街では、港湾地区や川沿いなどに老朽化して廃墟と化した大型倉庫が大量に打ち捨てられており、景観やセキュリティー(防犯)上の頭の痛い問題となっている。犯罪の温床となるほか、1980年代末にはイギリスなどでしばしば不法占拠された上、レイヴパーティーの会場とされたこともあった。 荒れた旧港湾の再生のため、欧米では廃倉庫群はさまざまに処理されてきた。取り壊されてウォーターフロント地区のビジネスセンターのオフィスビルの敷地となるか、あるいは倉庫の建物そのままで改修(リノベーション)されて美術館・博物館・瀟洒なショッピングセンターとなってウォーターフロント地区に賑わいを生み出すか、ほとんど手を加えない状態で大きなアパート兼アトリエ、ギャラリー、レストラン、クラブに改造され先端的な芸術地区を形成したりすることもある。(今日高級ショッピング街として有名なニューヨークのソーホー地区は、もとは廃業した繊維倉庫などのロフト(上層階、屋根裏部屋)を芸術家がアトリエとして利用し、ギャラリーなど美術関係者が集積したことが発展の端緒である。) しかし日本の場合、倉庫を住居や商業施設に用途変更するには、消防法や建築基準法の厳格な基準(窓、防火設備、耐震補強)をクリアしなければならないという壁があるため、転用するにはかえって巨額の改造費用がかかるためなかなか実現しない。よってスクラップ&ビルドもしくは放置となり、安価で個性的な手法で日本の倉庫街が再活性化する道は閉ざされている。 ただし、函館(金森赤レンガ倉庫)、小樽(小樽運河煉瓦倉庫街)、横浜(横浜赤レンガ倉庫)、金沢(石川県立歴史博物館)、舞鶴(赤レンガ倉庫群)、綾部(グンゼ博物苑)、神戸(神戸ハーバーランド煉瓦倉庫レストラン街)、姫路(姫路市立美術館)、高松(北浜alley)など、戦前の倉庫を擁する港町などでは、それなりの予算をかけて古建築の倉庫を保存・修復・転用した商業施設や博物館運営がおこなわれ、集客に成功している。
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