幸せのヒレ探し
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/04 22:18 UTC 版)
「悠 (人工鰭のウミガメ)」の記事における「幸せのヒレ探し」の解説
脱落しない人工ヒレ開発に続いて、次は、悠にとっての幸せのヒレ(生活の質の向上が得られる人工ヒレ)開発が課題となった。 「前回(第21モデル)から装着している左前肢のみに人工ヒレを装着し、残存部が多い右前肢はできる限りそのまま用いるのがよいか?」(左ヒレ装着型)という案と、「本来の左右対称の野生のヒレの形を考慮し、両前肢に人工ヒレを装着するのがよいか?」(両ヒレ装着型)という案が、論点となった。これらの論点は第22モデルとして両方とも2012年6月2日に装着試験を行い、客観的なデータ収集が行われた。 2012年春に悠は交尾をし、エコー検査により悠に産卵の可能性がでたため、6月21日に人工ヒレでの歩行実験をした。その時の悠は体重103キロに達し、重そうで、歩行は健常個体より遅く感じられたが、歩行自体には問題が無かった。ただ、ボディジャケットの腹甲についた面ファスナーは外れてしまった。そして今後は産卵行動もできる人工ヒレ開発が課題となった。 悠は7月3日に神戸空港人工ラグーン(人工池)へ移送され、そして7月16日に第23モデルの装着試験が行われた。第23モデルの工夫は、より遊泳力を生み出すために左の人工ヒレをより厚くしたことと、産卵のために砂の上を歩いてもジャケットが外れないようにしたことである。この人工ヒレは8月5日までの20日間つけ続けることに成功した。 8月5日には今度は両前肢とも同じ形とサイズの第24モデルの装着試験が行われ、そして悠の遊泳速度などのデータ収集のためデータロガーを取り付けて人工池に放した。この第24モデルの連続装着は10月8日まで続き、2012年の目標としていた1か月以上の長期装着が成功した。2か月ぶりに悠を引き上げたところ、人工海水池で自由に過ごしたため、悠の人工ヒレはすっかり痛み、至る所に藻が生え、ボディジャケットの一部はすり切れていた。そして、悠には再びデータロガーが取り付けられ、人工ヒレに慣れた状態の悠の遊泳速度や深度のデータが収集された。 10月10日に悠は再び人工池から引き上げられ、今度は第25モデルをつけるために車で1時間ほどの義肢メーカー社屋に移送され、そこで義肢メーカーの技術者が悠に第25モデルを取り付けた。第25モデルは左前肢のみに人工ヒレを用いるタイプであり、悠は再び人工池に戻り、データ収集が行われた。 11月4日には第26モデルが装着された。第26モデルのヒレ部分は通常のウミガメのヒレよりも長いタイプで、より強力な推進力が出せるか試された。12月9日に悠を引き上げたが、水温が下がって行動が不活発となり、あまり泳いでいないようであった。そのまま悠は神戸市立須磨海浜水族園の大水槽に“避寒”(越冬)のために移送され、翌2013年2月まで人工ヒレ無しで過ごした。
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