年によるワクチン型の変更
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/14 16:14 UTC 版)
「インフルエンザワクチン」の記事における「年によるワクチン型の変更」の解説
世界保健機関 (WHO) は、次年に流行する可能性が最も高いインフルエンザウイルス株を選択して、毎年ワクチンの内容を調整している。WHOの世界的インフルエンザ調査ネットワーク (Global Influenza Surveillance Network; GISN) によって、毎年、それぞれの年の流行期におけるインフルエンザワクチンとして、3つあるいは4つのウイルス型が選択される。従来は3価(3種類のウイルス型が入っている)のインフルエンザワクチンが使用されていたが、4価インフルエンザワクチンが承認されたことに伴い、WHOは、2012年から2013年までの北半球におけるインフルエンザ流行期から、B型株を2つに増やした4価のインフルエンザワクチンを推奨している。H1N1、H3N2、B型の系統から選択されたこれら3つあるいは4つの型は、次の流行期にヒトへの影響が強い可能性が最も高いとされる。 最初の正式なWHOによる勧告は、1973年に出されている。1999年からは、北半球(N)と南半球(S)の2つの勧告を年に2回行うこととなった。WHO世界インフルエンザ監視対応システム(Global Influenza Surveillance Network;GISN)は、1952年に設立された。このネットワークは、世界140か国に存在する「WHO国内インフルエンザセンター」(WHO National Influenza Centres; NICs) と、WHOによって認められた6つの「WHOインフルエンザ協力センター」(WHO Collaborating Centres; WHO CCs)によって構成されている。NICsは、自国でウイルスサンプルを収集し、検査を行う。ここから新しく単離されたウイルス株を、さらに高度な検査のためにWHO CCsに提供し、その結果が毎年のインフルエンザワクチンの構成に関する勧告の基本となる。製造するワクチンを決定するためのウイルス株選定は、どの株が次の年において支配的となるのかという最善の推定に基づいており、最終的には外れる可能性も存在する。とはいえ、ほとんどの年(2007年以前の19年のうち16年)において、インフルエンザワクチン株は流行株とのおおむね一致を示している。 日本においては、厚生労働省健康局の要請によって国立感染症研究所で開催される「インフルエンザワクチン株選定のための検討会議」に基づいて、厚生労働省が最終的な決定・通達を行う。国立感染症研究所では、WHO世界インフルエンザ監視対応システム(GISN)を介した世界各地の情報のみならず、日本全国77カ所の研究所と、厚労省結核感染症課の感染症発生動向調査事業により得られた国内の流行状況、および約8,158株に及ぶ国内分離ウイルスについての抗原性や遺伝子解析の成績、感染症流行予測事業による住民の抗体保有状況調査の成績などを考慮し、ワクチン候補株を選択する。さらに、これらの候補株について、ニワトリ卵での増殖効率、抗原的安定性、免疫原性、エーテル処理効果などの項目について、ワクチン製造に適するか検討を行っている。国立感染症研究所での会議で最終的なワクチン株が選定されると、厚生労働省健康局長から決定通知が公布され、その年のワクチン株が発表されることとなる。 なお、「2009(H1N1)pdm09」は新型インフルエンザA(H1N1)pdm09、つまり2009年に発生した新型インフルエンザを指す。2020-21シーズンから、A(H1N1)pdm09を単にA(H1N1)と表記する。
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