小説『メナムの残照』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 10:09 UTC 版)
日本では、小説『メナムの残照』は中村明人がモデルとなった作品といわれているが、タイでは、小説の中の主人公である小堀は、架空の人物であるとされている。日本で中村明人がモデルであると言われ始めた理由は、2013年のリバイバル映画化の際、監督が新たなサイドストーリーとして中村明人を紹介したことが原因と思われる。しかし、大多数のタイ人はすでに出来上がっている小堀のイメージが崩れるという理由で、中村明人がモデルであるという付け加えられたイメージを否定している。 『メナムの残照』は西野順治郎による訳書の邦題であり、原題は『クーカム』(仏教の業と輪廻を前提とした「運命のカップル」という意味)。タイの女姓作家トムヤンティが、軍人であった父から聞かされた話をもとに、彼女の理想の男性像を重ねて書き上げたもので、1969年に雑誌で発表された。これは中村明人が死去する前年のことだった。第二次世界大戦中、タイに駐屯した日本軍の青年将校「コボリ」と、抗日運動の指導者である父によってコボリと偽装結婚させられた、タイ人女性「アンスマリン」のストックホルム症候群のような複雑な愛を描いている。コボリの一途な片思いをよそに、アンスマリンは「偽装結婚であるがゆえに性交渉はしない」と非現実的な約束を交わし、それを反故にされてときには自暴自棄になるが、コボリこそ運命の相手なのだと最後に気づく。日本の敗戦後、タイが連合軍に寝返ったことを抜きにすれば、両国の相互依存関係を男女間の事柄に置き換え巧みに表してもいる。 タイ国内ではテレビドラマや映画にもなり、合わせて10回以上もリメイクされるなど高い人気を得ている。
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