将来的な利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/07 17:39 UTC 版)
「スペースシャトル外部燃料タンク」の記事における「将来的な利用」の解説
2010年9月にスペース・シャトルが退役することに伴い、NASAはアポロ宇宙船を元に設計したオリオン宇宙船と、シャトルから派生した有人ロケットアレスI と、重量運搬ロケットアレスVの開発を決定した。 アレスI とアレスVはどちらもシャトルのSRBを改良した5分割式の固体燃料補助ロケットを使用し、現行のETはアレスVの第一段およびアレスI の第二段ロケットの基本構造となる。ちなみにアレスI の第二段の液水の搭載量は98,000リットルだが、シャトルのETはその5倍以上の550,000リットルである。 アレスVの第一段ロケットは、デルタIVロケットにも使用された RS-68ロケットエンジンを5機搭載し、直径は サターン5型ロケットの第一段S-ICおよび第二段S-IIと同じ10mである。二つのタンクをタンク間構造体で分かつという基本構造はETと同じだが、シャトルと違って液酸と液水はタンクに直接注入される。またシャトルで使われた地上での作業中に頂点にかぶせられる排気用のキャップは、上段にロケットや宇宙船が配置されるために使われなくなる。アレスI の第二段ロケットには、現行のETで使用されている表面塗装の発泡断熱材のみが使われる。当初NASAは、ETやアレスVの第一段と同じように液酸・液水タンクをタンク間構造体で分ける構造にする予定だったが、2006年に重量およびコスト削減のための大幅な設計の見直しをし、サターン5型ロケットのS-IIやS-IVBで用いられた一枚の隔壁で二つのタンクを仕切る方法を採択した。またアレスVのような燃料の注入・排出・排気装置が一体型となっているものと違い、アレスI はサターンVやサターンIBで用いられたような従来型の注入・排出・排気装置を使用する。 当初の計画では、アレスI の第二段およびアレスVの主エンジンには使い捨て型のSSMEを使用する予定だったが、研究開発費削減と、「2011年までにアレスとオリオン宇宙船を発射する」というNASA長官マイケル・グリフィン(Michael D. Griffin)の公約を達成するためにアレスVにはRS-68が、アレスI にはJ-2ロケットエンジンを改良したものが使用されることが決定された。RS-68の採用により、アレスVは必要な燃料の量が増大したため直径が8.72mから10.06mに拡大され、またアレスI は第二段にSSMEよりも推力の劣るJ-2Xを採用したので、第一段の固体燃料補助ロケットを五段式にして推力を増強することになった。構造がシンプルでありながらSSMEに劣らない推力を発揮するRS-68を採用したことで、経費のかかるアレスI 用SSMEの空中での点火試験も行わずに済むことになり(J-2とその改良型のJ-2Xは、大気中や真空中でも再点火することができた)、NASAはおよそ3,500万ドルの開発費を削減することができたとされる。 現在検討されているDIRECT計画では、シャトルを土台に設計したジュピター・ロケット案が提出されている。ジュピターはETと全く同じ直径の胴体の下に3機のSSMEを搭載し、シャトルの標準のSRBを補助ロケットに使用して飛行士を打ち上げる。同じ構想の中で、第一段にSSMEをもう1機追加し、上段に地球脱出段(Earth Departure Stage)を搭載した運搬用ロケットも計画されている。この方式にすれば160億ドルの予算を削減し、シャトル退役後のアメリカの有人宇宙飛行の空白期間を、現在の5年以上から2年以下にまで短縮できると言われている。
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