対称テンソルとの差異
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/02/11 00:01 UTC 版)
対称代数と対称テンソル空間は混同しやすいが、対称代数がテンソル代数の商多元環であるのに対し対称テンソル空間はテンソル代数の部分線型空間である。 対称代数はその普遍性を得るために商多元環でなければならない(任意の対称代数は多元環だから、テンソル代数から対称代数に移る射影が多元環の準同型として得られる)。 一方、対称テンソルはテンソル代数への対称群の自然な作用に関する不変元として定義され、対称群は対称テンソルの空間に自明に作用する。注意すべきは、対称テンソル空間がテンソル積の下でテンソル代数の部分多元環にはならないということである。実際、V の元 v, w は自然に対称 1-テンソルとなるが、それらのテンソル積 V ⊗ w は対称 2-テンソルではない。 この差異は二次の成分でいうと、対称双線型形式(対称 2-テンソル)と二次形式(2-次対称冪の元)との違いであり、ε-二次形式(英語版)として記述できる。 標数 0 の場合、対称テンソル空間と対称代数は同一視することができる。まず、任意の標数で、対称代数から対称テンソル空間への対称化作用素(英語版)が v 1 ⋯ v k ↦ ∑ σ ∈ S n v σ ( 1 ) ⊗ ⋯ ⊗ v σ ( k ) {\displaystyle v_{1}\cdots v_{k}\mapsto \sum _{\sigma \in S_{n}}v_{\sigma (1)}\otimes \cdots \otimes v_{\sigma (k)}} で与えられる。対称テンソル空間のテンソル代数への埋め込みと対称代数への商射影との合成は、k-次成分上で k!-倍する変換になる。したがって標数 0 のとき、対称化作用素は対称テンソル空間から対称代数への次数付き線型空間としての同型であり、この同型を通じて対称テンソルを対称代数の元と同一視することができる。あるいはこの対称化作用素を k! で割って、 v 1 ⋯ v k ↦ 1 k ! ∑ σ ∈ S n v σ ( 1 ) ⊗ ⋯ ⊗ v σ ( k ) {\displaystyle v_{1}\cdots v_{k}\mapsto {\frac {1}{k!}}\sum _{\sigma \in S_{n}}v_{\sigma (1)}\otimes \cdots \otimes v_{\sigma (k)}} なる商写像の切断(英語版)にすることもできる。たとえばふたつの対称テンソルの積(対称積)は v w ↦ 1 2 ( v ⊗ w + w ⊗ v ) {\displaystyle vw\mapsto {\frac {1}{2}}(v\otimes w+w\otimes v)} なる対応で与えられる。これは対称群の表現論に関係している。標数 0 の代数閉体上の群環は半単純だから、任意の表現は既約表現の直和に分解され、それが T = S ⊕ V の形に書けるならば S を T の部分空間とも商空間 T/V とも看做せるのである。
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