対応の例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/28 02:54 UTC 版)
マルダセーナの1997年の見方に従い、理論家たちは多くのAdS/CFT対応の実例を発見して来た。これらの実例は、様々な共形場理論を様々な次元の弦理論やM-理論のコンパクト化した理論と関連付けている。ADS/CFT対応で関連づけられた理論は、一般的には、現実の世界を表すモデルではないが、素粒子的性質や高い自由度をもつ性質を持っていて、場の量子論や量子重力の中にある問題を解くために有効に使うことのできる。 最も有名なAdS/CFT対応の例は、積空間 A d S 5 × S 5 {\displaystyle AdS_{5}\times S^{5}} の上のタイプIIB弦理論が、4次元境界を持つN=4 超対称ヤン・ミルズ理論に等価であるという例である。この例の中では、重力理論のある時空は、有効理論として 5次元であり(よって、 A d S 5 {\displaystyle AdS_{5}} と書く)、5つの加えられた「コンパクト」な次元( S 5 {\displaystyle S^{5}} の因子よりエンコードされている)が存在する。少なくともマクロスコピックには、現実の世界の時空は 4次元であるので、このAdS/CFT対応のバージョンは重力の現実的なモデルを提供はしない。同様に、双対理論は超対称性が数多くあることを前提にしているので、なんら現実世界の系を表すモデルではない。しかし、以下に説明するように、この境界理論は、量子色力学、つまり強い力と共通な様相を示している。この理論は、フェルミオンを持つ量子色力学のグルーオンに似た粒子を記述している。結果として、原子核物理学、特にクォークグルーオンプラズマの研究に応用が見出されている。 もうひとつのAdS/CFT対応の実例は、 A d S 7 × S 4 {\displaystyle AdS_{7}\times S^{4}} 上のM-理論は、6次元 (2,0)-超共形場理論に等価であろうという例である。この例では、重力理論の時空は、有効理論として 7次元である。双対性の片方に現れる(2,0)-理論は、超共形場理論(英語版)の分類によって、予言される。この理論は、古典的極限(英語版)を持たない量子力学の理論であるので、いまだ少ししか理解されていない。 この理論を研究することに内在的な困難さがあるが、物理学と数学の双方にとって、様々な理由からこの理論は興味ある対象と考えられている。 さらにもう一つのAdS/CFT対応の実例として、 A d S 4 × S 7 {\displaystyle AdS_{4}\times S^{7}} 上のM-理論と、3次元のABJM超共形場理論が等価であるという例がある。 そこでは、重力理論は 4つの非コンパクトな次元を持ち、従って、このAdS/CFT対応のバージョンは重力のより現実的な記述をもたらしている。
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