女性にアスペルガー症候群の知識がない(なかった)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/12 05:32 UTC 版)
「カサンドラ症候群」の記事における「女性にアスペルガー症候群の知識がない(なかった)」の解説
精神科医療の中でアスペルガー症候群が表面化したのは1981年で、日本でアスペルガー症候群が注目を浴びるようになったのは2006年頃からである。子供のアスペルガー症候群は研究も進み、専門書も多く発行されている。しかし、大人のアスペルガー症候群について研究されるようになったのは、つい最近のことである。パートナーがアスペルガー症候群だと気づくチャンスもなく、「ちょっと変わっている人」「正直でまじめすぎる人」「自己中心的で困った人」というように、性格だと思い込んでいることが多い。 何十年も悩み続け、還暦を過ぎて初めて診察に訪れる妻もいる。カトリン・ベントリーの場合も、夫がアスペルガー症候群だと初めて気づいたのは結婚17年後だった。 アスペルガー症候群パートナーの行動を「普通の辞書」で解釈しようとしてもうまくいかない。幸せな結婚生活を送るためには、何がパートナーを幸せにするか学び、できるだけうまく相手の要求に応えるよう努める必要がある。しかし、通常は夫婦二人の間に、先生と生徒、親と子供というような立場の違いはない。相手は指導する、育てるという任務の対象でもない。対等な大人同士の関係のはずである。アスペルガー症候群について知らないまま結婚した女性には、なぜコミュニケーションがうまくいかないのかわからない。 カトリン・ベントリーは著書『一緒にいてもひとり』の中で、「何年間も自分たちの結婚はうまくいっていないと感じていたが、その理由を説明できなかった」、「困っていることは誰にも話さなかった」「もし一言話せばこんな言葉が返ってきただろう。『男だから』『うちの夫も同じよ』『自立しなさい』…」「相談できる人も、わかってくれる人もいなかった」「すべて自分一人で抱え込み、万事うまくいっているふりをした」と述べている。外界から自分を閉ざしたアスペルガー症候群パートナーと一緒にいると、姿は見えるのに存在が感じられず、一緒にいても一人ぼっちのように感じられる。しかし、外から見ると全て普通である。むしろ他の人には、アスペルガー症候群パートナーの行動に悩む妻は、あれこれ指図するえらそうな妻に見える。 夫婦という立場からアスペルガー症候群当事者をとらえた本『旦那(アキラ)さんはアスペルガー』の著者である野波ツナは、アスペルガー症候群パートナーとの関係を「言葉では表しにくい正体不明の違和感」と表現している。 アスペルガー症候群かもしれないということに本人より家族が気づく場合も多く、アスペルガー症候群の専門外来への相談が急増している。ただし、アスペルガー症候群は統合失調症や社会不安障害など様々な病気と重なる特性が多々あるため、大半は別の病気であったり、あるいは夫婦間にコミュニケーションがないだけだったりするという。昭和大学付属烏山病院院長の加藤進昌によると、2008年に成人のアスペルガー症候群の専門外来を開いた同病院の場合、アスペルガー症候群の人は初診全体の約2割にとどまるという。
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