太山寺本
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「太山寺本」は「仮名本」のなかでは最も古い形態を残す伝本で、播磨国太山寺(兵庫県神戸市)に所蔵されていることからこの名がある。 天文8年(1539年)11月2日、枝吉城城主の明石長行が、亡き妻の昌慶禅定尼の一周忌に際し、妻の遺品だった11種の書籍を奉納した。このなかには『古今和歌集』『拾遺和歌集』『後拾遺和歌集』『後撰和歌集』『玉葉和歌集』などの和歌集や、『伊勢物語』『平家物語』など様々な書籍があり、『曽我物語』(仮名本)全10巻もそのうちの一つである。この伝本は「曽我物語(仮名本)天文八年明石長行寄進奥書」として、国の重要文化財に指定されている(指定日:1966年(昭和41年)6月11日)。 全10巻本であるが、他の仮名本と比較すると構成に違いがある。ふつうの仮名本の1巻・2巻の内容を1巻にまとめ、2巻は源頼朝の前半生を語るのに費やしており、源頼朝が13歳で伊豆に流されたところから挙兵をして鎌倉に移るまでが描かれている。 本文は乙類に分類される。全編の至るところに、日本で著された故事成語事典(藤原孝範『明文抄』など)からの引用が散りばめられていて、しかもその引用が他の仮名本と較べて最も正確なのが特徴。他の諸本と対照すると、「太山寺本」独自のテキストに富み、かつそれが古い態様を示している。
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