大石寺本(訓読本)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 05:25 UTC 版)
「大石寺本」は、漢字の「真名本」をもとに抄出し、読み下したものの総称である。大石寺(静岡県富士宮市)に伝わることからこの名がある。ただし肝心の「大石寺本」そのものは所在不明になっている。そのため、「大石寺本」と言った場合には、原本の大石寺本そのものを指す場合と、大石寺本系の諸本を指す場合がある。 成立年代について一致した見解はなく、室町時代初期(佐成謙太郎)、元亀-天正年間(1570年-1593年、山岸徳平)などの説がある。 この系統の諸本は全10巻で、各巻の冒頭に「本朝報恩合戦謝徳闘諍集并序」とある。これらの顕著な特徴が、「大石寺本」が「真名本」をもとに作成されたことを如実に示しているとされている。一般的には、大石寺本系統の諸本は真名本のうち「本門寺本」から作られたというのが定説である。一方、祖本は「妙本寺本」でも「本門寺本」でもなく、現存しない別の真名本だとする説もある。 大石寺本(訓読本)系統は、原型である真名本から、物語全体のテーマ性を損なわないように注意しつつ、文章量を減らして読みやすくするように改編されている。そのための手法として、本文の削除や要約、語句の変更、表現の置き換え、独自のカナ表記などが行われている。また、ストーリーの本筋とは関係がない唱導譚が割愛されている。この結果として、読者にとって場面展開が把握しやすく、よりドラマティックな読み物になっている。 こうした改編が顕著であることから、「真名本」「仮名本」とは区別し、「訓読本」として第3の系統とする説がある。
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