大暗室
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/16 16:13 UTC 版)
『大暗室』(だいあんしつ)は、江戸川乱歩が発表したスリラー探偵小説。
概要
1936年(昭和11年)12月から1939年(昭和13年)6月まで、『キング』に掲載された。乱歩の連載小説のうちでは最も長くつづいた。乱歩曰く、「おそろしく大時代的な善玉悪玉の冒険小説で、涙香の『厳窟王』にルパンの手法をまぜたようなものを狙った」。また、エドガー・アラン・ポーの陥穽と振子から着想を得ている[1]。
ポプラ社の「少年探偵団シリーズ」では、子供向けに氷川瓏[2]が代作しているが、主役を原典には登場しない明智小五郎に、敵役が途中から怪人二十面相を名乗りだすように改変されている。そのため二十面相が残虐非道な殺人者として描れているが、作中で小林少年が「君はいつから怪人二十面相になったんだい」と問いかけていることから、別人の可能性を示唆している[3]。
あらすじ
明治43年。有明友定男爵、大曾根五郎、召使いの久留須左門の三人は台湾からの帰りに嵐に会い、漂流する。有明男爵は財産と妻の京子を大曾根に譲る遺言状を残す。だが陸地が見え、奇跡的に助かりそうになったとき、大曾根は有明男爵と久留須を殺害する。
大正3年。京子を妻として有明家を乗っ取った大曾根は、有明男爵の遺児・友之助を、京子が目を離した隙に池に落として殺害する。だが、友之助は間一髪で生きていた久留須に救出される。悪事がばれた大曾根は、屋敷に火を放ち実子・竜次を連れて姿を消す。屋敷は火事で燃え落ち、京子は死亡し、久留須は大火傷を負う。
それから約20年後の昭和X年。大曾根竜次は東京を火焔の渦巻で燃やし尽くし、地上の栄華を極める事を友之助に宣言する。こうして、正義の騎士・友之助と悪魔の申し子・竜次の異父兄弟による凄惨な戦いの火蓋が切って落とされた。
主要登場人物
- 有明友之助
- 主人公の青年で、正義の騎士を名乗る。竜次の異父兄。
- 大曾根竜次
- 渦巻の賊で、悪魔の申し子。友之助の異父弟。
- 有明友定
- 友之助の父で男爵。大曾根五郎に殺害される。
- 大曾根五郎
- 竜次の父。有明男爵を殺害し、有明の財産を乗っ取る。
- 有明京子
- 友之助と竜次の母。有明男爵殺害の真相を知られたため、大曾根五郎に殺害される。
- 久留須左門
- 有明友定、友之助父子の忠実な僕。幾度となく友之助を助ける。
- 星野真弓
- 友之助の恋人。竜次に誘拐される。
- 花菱ラン子
- レビュー団の人気女優。竜次に狙われる。
収録作品
- 光文社文庫『江戸川乱歩全集 第19巻 大暗室』(2003年8月)
脚注
出典
- ^ 河出文庫の自作解説より
- ^ 乱歩は武田武彦の著述と前書きで述べているが、実際には氷川がポプラ版を執筆。
- ^ 詳しくは、怪人二十面相#二十面相は複数人いるのか?を参照
外部リンク
- “乱歩を読む【9】『大暗室』” 2025年10月11日閲覧。 - 春陽堂書店
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