外部被曝による実効線量
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/22 14:40 UTC 版)
ここでは放射線業務従事者等が装着した個人線量測定器の測定線量から日本の法令に基づいて外部被曝による実効線量を計算する場合を述べる。外部被曝による実効線量計算式を示すにあたっては個人線量モニタリングの方法に触れる必要がある。 線量当量には区分があり、皮膚表面からの深さによって70μm線量当量、3mm線量当量、1cm線量当量となっていて、70μmは皮膚の基底層、3mmは眼の水晶体、1cmはその他すべてを対象とする線量当量である。 また、個人線量モニタリングは全身均等被曝を基本的な仮定とし、男子(および妊娠不能な女子)は胸部に、妊娠可能な女子は腹部に個人線量測定器を装着する。これは女子では胎児被曝を主に考慮しており、男子では造血組織である赤色骨髄の被曝を主に考慮しているためである。 不均等被曝が考慮されるべき場合には全身を「頭頸部」、「胸部・上腕部」、「腹部・大腿部」、「その他」の4部位に区分してその部位内では均等被曝を仮定し、全身均等被曝の場合の個人線量測定器装着部位以外の部位が最大被曝をするおそれのある場合にはその部位にも装着する。手指などの「その他」の部位が多く被曝する放射線作業では指輪型個人線量測定器も用いられるが、「その他」の部位は(中性子線被曝がない限り)皮膚の70μm線量当量のみを測定する。例えば、X線使用業務で肩から膝下まで鉛入り防護エプロンを着用する場合は個人線量測定器をエプロンの下の胸部または腹部に装着し、さらに頭頸部(エプロンの外)に装着し、また作業内容によっては手指にも装着することになる。 以前は3種類の線量当量すべてを測定することとなっていたが、2001年の改正法令施行により70μm線量当量と1cm線量当量のみの測定となった。これは実務上、3mm線量当量が他の二者の大きい方を超えないためで、眼の水晶体の等価線量はいずれか大きい方の値(安全評価側)を採用する。 実効線量の計算には1cm線量当量のみが用いられる。過去の法令では組織加重係数を元にした「実効線量当量」の計算式が示されていたが、ICRP 1990年勧告を受けた2001年の改正法令施行により組織加重係数がICRP 1977年勧告から変更され、不均等被曝による影響が小さくなったとして実効線量の計算式は放射線障害防止法令に明示されず、「適切な方法による」という表現になった。しかし、科学技術庁(当時)の通知には参考として平成11年4月の放射線審議会基本部会の示した式を掲載しており、事実上以下の式が現在の計算式となっている。 HEE = 0.08Ha + 0.44Hb + 0.45Hc + 0.03Hm ここで、 HEE : 外部被曝による実効線量当量 Ha : 頭頸部における1cm線量当量 Hb : 胸部および上腕部における1cm線量当量 Hc : 腹部および大腿部における1cm線量当量 Hm : 頭頸部、胸部・上腕部および腹部・大腿部のうち外部被曝による線量当量が最大となるおそれのある部分における1cm線量当量 である。 男性がX線使用業務で肩から膝下まで鉛入り防護エプロンを着用し、頭頸部線量当量が胸部・上腕部線量当量より大きかった場合を例にすると、 HEE = (0.08 + 0.03) Ha + (0.44 + 0.45) Hb となる。
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