外国籍者への保護支給裁判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 00:08 UTC 版)
「生活保護問題」の記事における「外国籍者への保護支給裁判」の解説
2008年12月に、永住許可を持つ大分市内の中国籍の女性が市に生活保護を申請したが却下され、女性は不服として訴訟を起した。 2010年10月18日大分地方裁判所 (一志泰滋裁判長) は「外国人には生活保護法の適用はない。永住外国人も同様」「外国人の生存権保障の責任は第1次的にはその者の属する国家が負うべきだ。永住外国人でも、本国に資産があるかどうかなどの調査が難しく無条件に保護を認めることになる」とし、生活保護法の適用は日本国籍を持つ者に限られるとして請求を棄却した[リンク切れ]。弁護団によると、永住外国人に対して生活保護の受給権を認めないと明示した判決は初であるという。 また同裁判において請求の根拠とされた1954年の厚生省社会局長通知については「通知に基づく保護の性質は(行政側から外国人への)贈与。(今回、大分市は)贈与を拒絶しており、女性に生活保護の受給権はない」として却下した。 この判決に対して女性は控訴。2011年11月15日福岡高等裁判所(古賀寛裁判長)は「難民条約の批准や外国人に対する生活保護の準用を永住外国人に限定した指示(1990年)により、国は一定範囲の外国人も法的保護の対象とした」と判断。その上で、女性は生活保護が必要な状態だったと認め、訴えを退けた一審判決を見直し、大分市の却下処分を取り消した。 大分市はこの控訴審判決を不服として最高裁に上告。2014年7月18日、最高裁第二小法廷は「永住外国人は生活保護法の適用対象ではない」との初判断を示し、その上で、永住外国人も生活保護法の対象になると認めた2審福岡高裁判決を破棄、女性側の逆転敗訴を言い渡した。4人の裁判官全員一致の結論であり、最高裁第二小法廷は「生活保護法が適用される『国民』に外国人は含まれない」と指摘、「外国人は行政による事実上の保護対象にとどまり、法に基づく受給権は持たない」と結論づけた。 なお、同女性は別の裁判で、外国籍の者は生活保護法上の行政処分に対する行政不服審査法に基づく不服申立てができるとの判決が確定している。
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