地球の自転によるコリオリの力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 01:34 UTC 版)
「コリオリの力」の記事における「地球の自転によるコリオリの力」の解説
地球は東向きに自転している。そのため、低緯度の地点から高緯度の地点に向かって運動している物体には東向き、逆に高緯度の地点から低緯度の地点に向かって運動している物体には西向きの力が働く。北半球では右向き、南半球では左向きの力が働くとも言える。例としては、以下のものがある。 地衡風 上空で気圧の差があれば気圧の高いほうから低いほうに向かって空気塊を動かそうとする力が働く。この力を気圧傾度力という。等圧線が平行かつ気圧傾度力が一定ならば空気塊は等圧線に対して直角に気圧の高いほうから低いほうへ加速される。北半球ではその進行方向右向きコリオリの力が働く。コリオリの力は速度に比例して大きくなるため空気塊は右に曲がりながら速度を上げ最終的には気圧傾度力とコリオリの力は正反対の向きにつりあう。すると空気塊は加速されない向きも変えない安定した風になる。この風を地衡風という。 台風 台風が北半球で反時計回りの渦を巻くのは、風が低気圧中心に向かって進む際にコリオリの力を受け、進行方向に対し中心から右にずれた地点に到達するためである。 極軌道の人工衛星 北極点上空から日本上空へ向かおうとする人工衛星は直進するが、地球は自転しているため、地上にいる観測者には、衛星がアジア大陸方面へ逸れていくように見える。 海流 大気だけでなく、海流の運動もコリオリの力の影響を受けている(エクマン輸送)。 砲弾 北半球で真北に撃った砲弾が、標的よりもわずかに東(右)にずれることは昔から知られていることである。このように、大砲やロケット、 1000 m {\displaystyle 1000\mathrm {m} } 近い長距離での狙撃などの軌道計算はコリオリの力を考慮した補正が必要である。 ここからは地球の自転によるコリオリの力の大きさを数学的に記述する。地球の角速度を ω {\displaystyle \omega } とすると、緯度 ϕ {\displaystyle \phi } における地平面内の南北方向の方向ベクトルの角速度は、 ω sin ϕ {\displaystyle \omega \sin \phi } となるため、地球の自転によるコリオリの力の大きさは物体の速さを v {\displaystyle v} として | F C | = m v f , f = 2 ω sin ϕ {\displaystyle |{\boldsymbol {F}}_{C}|=mvf,\quad f=2\omega \sin \phi } で表される。 f {\displaystyle f} はコリオリ因子と呼ばれる。 コリオリの力が与える影響を考える一例として、コリオリの力を一番強く受ける北極において時速 100 k m {\displaystyle 100\mathrm {km} } のボールをピッチャープレートとホームベースの距離 18.4 m {\displaystyle 18.4\mathrm {m} } の間で投げたとする。地球の角速度 ω {\displaystyle \omega } は ω = 7.29 × 10 − 5 r a d / s {\displaystyle \omega =7.29\times 10^{-5}\mathrm {rad/s} } であるから、コリオリの力による加速度の大きさは a ′ = 2 ω v ′ = 4.03 × 10 − 3 m / s 2 {\displaystyle a'=2\omega v'=4.03\times 10^{-3}\mathrm {m/s^{2}} } である。通過するのにかかる時間 t {\displaystyle t} は t = 0.661 s {\displaystyle t=0.661\mathrm {s} } であるから等加速度運動とみなすとずれの距離 x {\displaystyle x} は x = 1 2 a ′ t 2 ≒ 0.88 m m {\displaystyle x={1 \over 2}a't^{2}\fallingdotseq 0.88\mathrm {mm} } つまり 1 m m {\displaystyle 1\mathrm {mm} } にも満たない。また北極より緯度の小さい地域ではコリオリの力の影響はさらに小さくなる。日常生活の中で地球の回転によって生じるコリオリの力は非常に小さなものなのである。 次に北極において秒速 1000 m {\displaystyle 1000\mathrm {m} } の砲弾を距離 10 k m {\displaystyle 10\mathrm {km} } 先まで飛ばすときのコリオリの力による影響を考える。先ほどと同様に考えると、コリオリの力による加速度の大きさは a ′ = 2 ω v ′ = 1.46 × 10 − 1 m / s 2 {\displaystyle a'=2\omega v'=1.46\times 10^{-1}\mathrm {m/s^{2}} } であり、通過するのにかかる時間tは t = 10.0 s {\displaystyle t=10.0\mathrm {s} } であるから等加速度運動とみなすとずれの距離 x {\displaystyle x} は x = 1 2 a ′ t 2 ≒ 7.3 m {\displaystyle x={1 \over 2}a't^{2}\fallingdotseq 7.3\mathrm {m} } したがって 7 m {\displaystyle 7\mathrm {m} } ものずれが生じる。このように大規模な運動(運動速度が大きくて、運動する時間も長い)では地球の回転によって生じるコリオリの力は大きな影響を及ぼすのである。
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