固体素子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 05:54 UTC 版)
半導体における負性微分抵抗は、1909年ごろにウィリアム・エクルズ やG・W・ピカード などによって最初の点接触型ダイオードである「ネコのひげ型」検波器で見つかっていた。エクルズらは無線検出器としての感度を向上させるために接合を直流電圧でバイアスすると自発的な発振が起きることに気づいていたが、この効果は深く追求されなかった。 負性抵抗ダイオードを実用に供した最初の人物はロシア人の無線研究者オレク・ロシェフである。ロシェフは1922年にバイアスをかけた紅亜鉛鉱(英語版)(酸化亜鉛)の点接触接合が負性微分抵抗を持つことを見出し、これを利用して増幅器や発振器、また再生増幅機能を備えた無線受信機を固体デバイスで作成した。トランジスタが発明される25年前のことである。後にはスーパーヘテロダイン受信機を構築しさえした。しかしこれらの業績は真空管技術の興隆に覆い隠された。ロシェフは10年のうちに研究を放棄し、この技術(ヒューゴー・ガーンズバックによって「クリストダイン」と名付けられた)は忘れられた。 最初に広く使用されるようになった固体負性抵抗デバイスは、1957年に日本人の物理学者江崎玲劣奈が発明したトンネルダイオードである。この種のダイオードは接合サイズが小さいことから寄生容量が低く、そのためより高い周波数で動作し、通常の真空管発振器の限界を超えるマイクロ波周波数で電力を発生できるものだった。トンネルダイオードの登場によりマイクロ波発振器に用いるための負性抵抗半導体デバイスが探求され始め、IMPATTダイオード、ガンダイオード、TRAPATTダイオードなどが生み出されていった。1969年、黒川兼行は負性抵抗回路の安定性に関する条件を導出した。現在マイクロ波エネルギーの発生源としては負性微分抵抗ダイオード発振器が最も広く利用されており、ここ数十年でも多くの新しい負性抵抗素子が見つかっている。
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