君主の軍備
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/30 18:58 UTC 版)
君主にとって軍備と法律は不可欠なものであり、良い武力の下で初めて良い法が成立する。マキャヴェッリのこの思想は、「すべての国にとって重要な土台となるのは、よい法律とよい武力とである」との言葉で要約されている。そもそも軍隊とは自国軍、傭兵軍、外国軍、混成軍のいずれかである。この中で傭兵軍や外国軍は無統制で不忠実であるため、無用であるばかりでなく危険であると史実を引用して断定している。 傭兵軍の部隊長が有能であれば、君主はその傭兵からの圧力に晒され、無能であれば君主は戦争そのものに敗れてしまう。また、援助や防衛のために派遣された外国軍は、援軍として勇猛であるがゆえに戦争が終結しても駐留し続け、事実上占領してしまう危険性がある。したがって君主は自国民から編制された自国軍に統治の基盤を求め、戦争においては他人の武力に頼らないことが重要であるとマキャヴェッリは結論づけている。自国の武力がなければ、あらゆる君主国は破滅の危険に晒されるだけでなく、自力で事態を動かせないために周囲の情勢に左右されるだけになってしまう。 さらにマキャヴェッリは軍事を統治者の本来的な任務に位置づけ、軍備を君主の力量を強化するものとしている。武力のある者が無力な者に服従することや、無力な者が武力ある従者に包囲されて安心することはありえないためである。軍事に無能な君主は部下の兵士たちから尊敬されず、また君主は部下を掌握することができない。したがって君主は軍備には常に注意しなければならない。 軍事訓練には実践的な方法と精神的な方法がある。実践的な方法では、兵士を組織化し、基本教練を行わせるだけでなく、狩猟などの実践形式によって鍛え上げる。精神的な方法では、歴史を学ぶことが必要である。作戦における指揮や戦術を研究し、逆境における準備を思考の上でも進めなければならない。 また、君主は地形についての理解を深める必要がある。地形についての知識がなければ、宿営地を予定し、部隊を行軍させ、戦闘陣を展開することは不可能である。自国の国情について知らない君主は、指揮官としての適性が欠落しているということになる。
※この「君主の軍備」の解説は、「君主論」の解説の一部です。
「君主の軍備」を含む「君主論」の記事については、「君主論」の概要を参照ください。
- 君主の軍備のページへのリンク