君主の力量
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/30 18:58 UTC 版)
新設された君主国の行政は征服者である君主の力量によって左右されるとマキャヴェッリは論じる。国家を樹立する途上で発生する問題の原因は新たな社会秩序を導入しようとすることにあり、言い換えれば旧秩序の中で権益を持つ人々すべてと敵対することである。このような問題を研究するためには、君主の力量に着目する必要がある。力量が不足していればその統治は失敗し、民衆を説得し続けることがむずかしくなるのである。 他人の武力や運によって新たな君主国を得たとしても、そのような成果は君主の指導力が不足しているために常に不安定にならざるを得ない。もしも運によって政権を得たとしても、その力量が不足していれば国の基盤を構築することはできない。具体的には、敵の排除、味方の確保、武力や謀略による勝利、民衆からの畏怖と敬愛、兵士からの畏怖と敬愛、政敵の抹殺、旧制度の改革、厳格かつ寛大な振る舞い、忠実でない軍の再編、諸侯たちと親交を保ちつつ便益をもたらすようにするか、攻撃の際には慎重であること、これら全てが君主国において不可欠な力量である。 非道な手段によって政権を得た君主は、力量があるとはいえない。なぜならば、そのような手段によって獲得した権力には栄光がないためである。 征服者が国を奪取する場合、残虐行為を一度で終結させ、その後に民心を獲得しなければならない。断続的な残虐行為は民衆の信頼を失わせてしまうからである。逆に、恩恵は小出しにして継続的に実施することで民衆の支持を得ることができる。
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