君主の征服
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/30 18:58 UTC 版)
征服を実施する場合、君主には多くの配慮が求められる。マキャヴェッリは征服地域に近接する諸外国に注意する必要について述べている。 例えば、ある地域においてある弱小国を征服した場合、その周辺の弱小国もまた征服者に対して進んで服従を申し出ると考えられる。同地域に影響力を持つ大国がいるならば、征服によって得られた諸勢力と連合してその国を滅ぼすことで、ようやく完全に支配を確立することが可能となる。このような征服の諸問題を克服した成功例として、マキャヴェッリは古代マケドニア王のアレクサンドロスが東方遠征で得られた広範な領土を維持し続けたことを挙げている。この事業の成功については君主国の様式で説明される。 君主国には、君主が大きな権限を以って行政を担う大臣を任命し、集権的に統治する様式と、元々その地域で支持を得ている諸侯にある程度の自律性を認めて、君主が分権的に統治する様式の二つがある。前者の様式の国家を征服者が統治することは容易であるが、後者の場合は各地でさまざまな勢力が存在するために困難であると考えられる。したがってマキャヴェッリは、アレクサンドロスの征服はペルシア帝国が集権的な君主国であったために安定的な統治が成功したと考察する。 征服においてはそれまで自由市民によって統治されてきた都市や国家を征服することもある。マキャヴェッリによれば、このような民衆を統治するためには一般に三つのやり方が考えられる。第一に、都市や国家を滅亡させること。第二に、君主がその地域へ移住すること。第三に、ある程度の自治を認めて君主に従順な寡頭政権を成立させることである。基本的に自由市民はかつての独立を回復しようと試みる傾向があるため、その地域の市民を統治政策の中で活用することが適当である。
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