台風14号の被害と温井ダム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 08:26 UTC 版)
「温井ダム」の記事における「台風14号の被害と温井ダム」の解説
温井ダム完成により、太田川水系の治水対策は強化され、広島市などの対する上水道供給態勢が確保された。治水については建設中に発生した1999年9月の台風18号において、洪水調節機能を行使できない工事中の段階であったにもかかわらず流入量毎秒910立方メートルの洪水を毎秒460立方メートルに抑えるなど、早速治水機能を発揮した。しかし本来の計画においては、温井ダムのほか太田川本流の新規ダム計画と合わせることで毎秒4,500立方メートルの洪水を制御すると定めており、温井ダムだけでは計画通りの治水目標は達成できない。太田川本流上流部における治水を担うはずのダム計画であった吉和郷ダム計画は立ち消えに近い状況で、この地域は治水対策について空白状態であり、弱点となった。太田川水系上流部の治水計画は例えるなら飛行機のエンジンが片翼しか機能していない状態であり、こうした中で発生したのが2005年(平成17年)9月の台風14号による豪雨災害である。 この台風は宮崎県において大淀川で降り始めからの降水量が1,000ミリを超えて記録的な水害となったほか、高千穂鉄道が大きな被害を受け廃止に追い込まれたり、高知県では貯水率0パーセントだった早明浦ダム(吉野川)が一日で貯水率100パーセントとなるなど、各地で豪雨による被害をもたらした。広島県では南西部を中心に総降水量が500ミリを超える豪雨をもたらし、太田川は昭和47年7月豪雨の毎秒6,800立方メートルを超える毎秒7,200立方メートルの流量を記録。整備が遅れていた太田川上流・中流において家屋流失や道路損壊などの被害を多発させた。この時に降雨パターンは昭和47年7月豪雨の時とは異なり、治水事業の空白地帯だった太田川本流最上流部や支流の水内川上流部などに集中的に降雨しており、太田川治水事業の弱点を台風に衝かれた格好となった。一方、温井ダムのある滝山川上流部では降雨量は比較的少なかった。結果的に温井ダムではカバーできない太田川上流・水内川上流域の豪雨によって被害が拡大したが、被災住民の一部からは「温井ダムは役に立たなかった」、あるいは「温井ダムの放流で被害が拡大した」という意見が出て、太田川河川事務所が住民に対して行ったアンケートにおいても温井ダムに対する批判が挙がっている。
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