古代小説の発展
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朝鮮文学はハングルが誕生してもなお、漢文を主体として綴られていた。また小説という読み物に対しての評価が著しく低かったため、小説は儒教的な背景でのみ語られることとなった。こうした一連の小説群は古代小説と呼ばれる。 漢文での作品としては『洪吉童伝』(許筠)が挙げられる。水滸伝の翻案小説と言われ、朝鮮文学で「章回小説(物語を章に区切ったもの)」の形式を取り入れた最初のものだとされている。また、社会批判を含んだ社会小説とも言われ、同じ様な小説に『田禹治伝』『徐花譚伝』がある。また、中国の『三国志演義』が広く読まれ、それを翻案した小説もまた読まれた。その他に漢文で書かれた古代小説として、『彰善感義録』『燕巌外伝』『黄岡雑録』『虞初続志』『古香居小史』『丹良稗史』『奇談随録』『韓淑媛伝』『琉球王世子外伝』『東廂伝』『三韓拾遺』などがある。 ハングルでの作品としては、『九雲夢』(金萬重)がその最高傑作と評価されている。『謫降七仙林虎隠伝』、『張国鎮伝』、『紅楼夢』の翻案と推測されている。後に漢文に翻訳されるといった珍しい現象さえ起きている。『紅楼夢』が他の作家に大きな影響を及ぼしたように、『九雲夢』も『玉麟夢』『玉蓮夢』『玉桜夢』といった翻案が登場した。金萬重は『謝氏南征記』も残している。 また、朝鮮半島に伝えられる説話が書籍になったものとして、『コンチュイとパッチュイ(ko:콩쥐팥쥐전)』(シンデレラ系説話)、『鼠同知伝』『蛙伝(ko:두껍전)』『興夫伝』『翟成義伝』『金犢伝』『蛙蛇獄案』『人形伝(꼭두각시전)』『玄駒記外史』などがあるが、最も有名なものとして、『春香伝』『沈清伝』が挙げられる。 『春香伝』『沈清伝』ともにその発祥は定かではないが、申在孝(1812年‐1884年)が『春香伝』『沈清伝』を基にパンソリの台本として『春香歌』『沈清歌』を作ったとされること、様々な文献に『春香伝』『沈清伝』の原型が見られることから、古くから伝えられている説話である、と言える。『春香伝』は情艶小説と称され、同じ類の小説に、『淑香伝』『淑英娘子伝』『白鶴扇伝』『深山伯伝』『玉丹春伝』がある。 そのほかに、継母小説と称される『薔花紅蓮伝』『鄭乙善伝』『張豊雲伝』『魚龍伝』、公案類(裁判が重要なプロットになる小説)と称される『玉娘子伝』『陳大方伝』『蛙蛇獄案』『鷹鸚訟案』『柳淵伝』『月峯記』『朴文秀伝』『欽欽新書』が知られている。
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