古代宗教の登場
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/03/30 16:42 UTC 版)
やがて社会が発達し、単なる人間の群れから部族へ、部族から民族へ、民族から国家へと発展してくると、呪術もまた個人単位のものから社会単位のものへと変化した。問題とされることも、個人の単純な願いごとから家族や氏族、民族や国家の問題へと大規模化ないし複雑化し、個人を越えた威力や生命力は部族神、国家神のかたちでまとめあげられていく。 理論経済学者村上泰亮は、人間集団の存続をその内外で正統化する根拠で最も有力なものとして「血縁(キンシップ)」を掲げ、これが人類最古の組織原理であったろうとする。そして、定着農耕開始期には比較的平等な血縁的集団である氏族(クラン)がみられたことは事実として確認されており、農業生産の高まりに応じて集団規模が拡大すると、それにともなって自らの祖先たちを位階的に体系化する伝承や神話が各地に生まれたとする。「位階化神話」は祖先神体系に修正ないし拡大をほどこして、実際には血縁のつながりのない人びとを想像上の血縁関係のなかに取り込んでいき、家族 → リニージ(同祖集団) → クラン(氏族) → クラン連合(部族) → 部族連合(民族)へと、血縁的正統化の論理によって拡大される。こうして事実上の血縁関係の後退は神話的な血縁関係によって補完され、首長制から王制への連続的な進化がなされる。村上によれば、都市文明をともなった古代文明のうち、最も非血縁的であるかにみえるメソポタミア文明においても、その宗教の内実は「位階化神話の高度化」であったと評価し、エジプトでも同様にみられる神々の階層化と広大な宇宙論との集大成こそが、R.N.ベラーのいう「古代宗教」である、としている。
※この「古代宗教の登場」の解説は、「宗教史」の解説の一部です。
「古代宗教の登場」を含む「宗教史」の記事については、「宗教史」の概要を参照ください。
- 古代宗教の登場のページへのリンク