反応速度と合成される核種
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/16 08:02 UTC 版)
「トリプルアルファ反応」の記事における「反応速度と合成される核種」の解説
トリプルアルファ反応の確率は非常に小さい。そのため、この反応によって炭素が作られるためには長い時間がかかる。ビッグバン後の元素合成で炭素が全く合成されなかった理由はここにある。すなわち、ビッグバンの後には宇宙の温度が急速に下がり、炭素が作られるのに必要な温度をすぐに下回ってしまったためである。 通常、トリプルアルファ反応の確率は極めて小さい。しかしベリリウム8の基底状態のエネルギーは2個のアルファ粒子のエネルギーと非常に近い値になっている。また、反応の第2段階で起こる 8Be + 4He のエネルギーも 12C のある励起状態のエネルギーにほぼ一致している。これらのエネルギー的な共鳴によって反応の確率が大幅に増え、結果的にアルファ粒子が結合してベリリウム8や炭素12を作ることが可能になっている。 また、トリプルアルファ反応の副次的過程として、炭素12の原子核がさらにヘリウム4と融合して酸素の安定同位体を作ってエネルギーを生成する反応も起こる。 C 12 + 4 He ⟶ 16 O + γ {\displaystyle {\ce {^{12}C\ + \ ^4He -> \ ^{16}O\ + \gamma}}} しかし、この連鎖反応の次の段階である、酸素16の原子核とアルファ粒子が結合してネオン20を作る反応は核スピンの条件によってほとんど起こらない。この結果、恒星内部での元素合成では炭素12と酸素16は大量に作られるが、これらがさらに重いネオンなどの元素に変換される割合はごく小さい。したがって、この酸素16と炭素12が、言わば「ヘリウム燃焼の灰」だと言って良い。 恒星内部の核融合によって作られる核種は鉄56までである。これより重い核種は主に中性子捕獲によって作られる。s過程と呼ばれるこの比較的低速 (Slow)の中性子捕獲過程によって、鉄以降の重元素のおよそ半分が合成される。残りの半分はr過程と呼ばれるより速く (Rapid)進む中性子捕獲反応によって作られる。r過程は超新星爆発で恒星の中心核が重力収縮する際に起こると考えられている。
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