単位円板上のポアソン核
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/21 04:29 UTC 版)
「ポアソン核」の記事における「単位円板上のポアソン核」の解説
複素平面において、単位円板に対するポアソン核は次で与えられる。 P r ( θ ) = ∑ n = − ∞ ∞ r | n | e i n θ = 1 − r 2 1 − 2 r cos θ + r 2 = Re ( 1 + r e i θ 1 − r e i θ ) , 0 ≤ r < 1. {\displaystyle P_{r}(\theta )=\sum _{n=-\infty }^{\infty }r^{|n|}e^{in\theta }={\frac {1-r^{2}}{1-2r\cos \theta +r^{2}}}=\operatorname {Re} \left({\frac {1+re^{i\theta }}{1-re^{i\theta }}}\right),\ \ \ 0\leq r<1.} これには二つの解釈が存在する。一つは r と θ の函数という解釈、もう一つは r によって添え字付けられた θ の函数の族という解釈である。 D = { z : | z | < 1 } {\displaystyle D=\{z:|z|<1\}} が C 内の開単位円板で、T はその円板の境界、f は L1(T) に属する T 上の函数とする。このとき、次の式 u ( r e i θ ) = 1 2 π ∫ − π π P r ( θ − t ) f ( e i t ) d t , 0 ≤ r < 1 {\displaystyle u(re^{i\theta })={\frac {1}{2\pi }}\int _{-\pi }^{\pi }P_{r}(\theta -t)f(e^{it})\,\mathrm {d} t,\ \ \ 0\leq r<1} で与えられる函数 u は、D 内で調和的であり、円板の境界 T 上のほとんど至る所で f と一致する極限を持つ。 u の境界での値が f であるということは、r → 1 につれて函数 Pr(θ) が畳み込み多元環 Lp(T) 内の近似的単位元(英語版)を形成するという事実より示される。線型作用素と同様に、それらは Lp(T) 上でディラックのデルタ函数に各点収束する。最大値原理より、u はそのような D 上の調和函数として唯一つのものである。 この近似的単位元との畳み込みは、L1(T) 内の函数のフーリエ級数に対する総和可能核(英語版)の例を与える(Katznelson 1976)。f ∈ L1(T) はフーリエ級数 {fk} を持つとする。フーリエ変換ののち、Pr(θ) との畳み込みは列 {r|k|} ∈ l1(Z) との乗算になる。その結果得られる積 {r|k|fk} に逆フーリエ変換を施すことで、次のような f のアーベル平均 A r f {\displaystyle A_{r}f} が得られる: A r f ( e 2 π i x ) = ∑ k ∈ Z f k r | k | e 2 π i k x . {\displaystyle A_{r}f(e^{2\pi ix})=\sum _{k\in \mathbf {Z} }f_{k}r^{|k|}e^{2\pi ikx}.} この絶対収束級数を再び整理することで、f は D 上のある正則函数 g と反正則函数 h の和 g + h の境界値であることが示される。 調和函数が正則であるためには、解はハーディ空間の元であることとなる。これは f の負のフーリエ係数がすべて消失する場合に真となる。特に、ポアソン核は単位円板上のハーディ空間と単位円の同値性を論証する上で一般に用いられる。 Hp(z) 内の函数の T 上の極限であるような函数の空間は、Hp(T) と呼ばれることがある。これは(少なくとも p≥1 に対して)Lp(T) の閉部分空間である。Lp(T) は(1 ≤ p ≤ ∞ に対して)バナッハ空間であるため、Hp(T) もまたバナッハ空間である。
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